2025/6/15
今日、「小さな政府」か「大きな政府」かという問いは、リバタリアンと社会民主主義の対立に象徴されるように、政治的イデオロギーの対立軸として語られがちである。しかしこの二項対立を、経済理論の対立構造にそのまま重ねるのは誤りである。経済学における本質的な対立は、政府の裁量的介入を肯定するケインズ主義と、合理的期待形成に基づき政策効果を否定する学派との間にある。
合理的期待形成学派は、「リカード=バローの中立命題」に代表されるように、人々が合理的であれば、国債による財政支出は将来の増税を人々が合理的に予期するため、消費は抑制されると主張する。サプライチェーンのグローバル化で乗数効果が小さくなったとする説もあるが、それは情報の共有化により合理的認識が向上した結果であり、本質的には合理的な期待行動の強化に過ぎない。この立場が台頭したのは1970年代の米国、スタグフレーション下で公共事業など財政政策の有効性が疑問視された時代である。その帰結として新自由主義が台頭し、「小さな政府(新自由主義)」は合理的期待形成という経済理論に基づく政策思想として定着した。ただし、再分配や社会保障などの所得移転機能は合理的期待の射程外にある。理論上、新自由主義の立場でも恒常的な制度設計の中で再分配を組み込むことは排除されない。たとえば、私こと野間口が都知事選で掲げた失業保険の拡充政策では、財源が国債でも、給付を受ける失業者の所得が恒常化されるため、恒常所得仮説(新自由主義)により消費は維持され、中立命題による消費抑制は生じにくい。
つまり、「小さな政府 vs 大きな政府」という構図は、本来は政策効果をめぐる経済理論上の帰結であり、単純な政治的イデオロギーの対立ではない。合理的期待学派は予期されない政策の有効性を一定程度認めてはいるが、予期される政策は無効となるので発展性に乏しいため、重要ではあるが主流経済学派が生まれた原因であるも、メディア・一般にはあまり知られていない。
最後に、アメリカと日本の財政構造の違いを見てみよう。アメリカの歳出(軍事費を除く)は、中間層減税、フードスタンプ(6兆円)、失業保険、メディケイドなど、消費性向の高い中低所得層への再分配を重視している。一方の日本は、かつての1990年代は公共事業中心、現在は高齢者向けの社会保障(年金・介護・医療)が主軸である。特に、現役世代から税や保険料を徴収し、消費性向の低い高齢層に分配する構造は、全体の消費を抑制し、景気刺激効果に乏しい。
このような日本の高齢化した財政構造では、「分配による成長」が困難であり、財政規律と持続的な社会保障の両立は極めて困難な課題となっている。
1完全合理性
経済主体(消費者・企業など)が常に将来の政策や市場変動を正しく予測し、それに基づいて行動するという仮定。合理的期待形成仮説の基礎となる。合理的経済人。
2リカード=バローの中立命題
政府が国債で歳出を増やしても、将来的な増税を予期した家計が消費を抑制するため、経済全体の需要は増加しないとする理論。そのため、公債は世代転換しない。
3恒常所得仮説
人々の消費は現在の所得ではなく、将来も含めた「恒常的な所得」に基づいて決まるとするミルトン・フリードマンの理論。例えば失業保険が安定的に継続されるなら、それを所得の一部とみなし消費を維持する可能性がある。
4ニューケインジアン(主流経済学派)
ケインズ経済学と合理的期待形成を統合し、価格の硬直性や市場の非完全性を考慮した現代の主流派経済学。長期では完全合理性を肯定するも短期的な政策介入の効果を一定認める立場。
5リバタリアン
「絶対権力は必ず腐敗する」という言葉を支持する通り、国家権力の介入を最小限に抑え、個人の自由と私的所有権を最大限に尊重すべきとする政治思想。経済的には自由市場を重視し、社会保障や福祉政策に否定的な立場をとることが多い。
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ノマグチ ショウ/38歳/男
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