2026/5/1
釧路市議会議員の木村はやとです。
家やビルや道路を作るとき、地面を掘ります。 そこで出てくる「いらなくなった土」が**残土(建設発生土)**です。
関東地域の工事現場からは毎年、東京ドーム24杯分(約3000万㎥)もの残土が発生します。 (出典:株式会社建設資源広域利用センター) この土、どこかに持っていかないといけません。
でも、残土は法律上「廃棄物」ではないんです。 だから産業廃棄物のように厳しく管理されない。 これが、あらゆる問題の入口になっています。
首都圏では残土の処分に費用がかかります。 一方、地方の造成工事では大量の土が必要になることがある。
「余っているところ」と「欲しいところ」がうまくつながると、 遠くから船で運んでも、お互いにとってコストが合う場合があるのです。
こうして本州から北海道に、土が海を渡ってくることがあります。
船(内航船)に積んで釧路港をはじめ、北海道内の港湾に持ってきて、 トラックで工事現場に運べばいい。 しかも、この輸送に特別な許可はいりません。 土は「廃棄物」じゃないので、普通の荷物と同じ扱いだからです。
同じ「本州から北海道内の港湾に来る土」でも、じつは2種類あります。
国が主導するUCR(建設資源広域利用センター)という仕組みがあります。 これは首都圏の公共工事の残土を、釧路港など地方の港湾整備に使う制度です。
このルートを通る土は、比較的安全と言えます。
問題は、民間の事業者が独自に手配する土です。 たとえばメガソーラー(大規模太陽光発電所)の造成工事など。
つまり、どこから来た何の土かを、誰も確認しないまま地面に埋められる可能性があるのです。
釧路市北斗で、大阪の事業者が 釧路湿原国立公園のすぐそばにメガソーラーを建設しようとしました。
この工事では、たくさんの問題が次々と発覚しました。
【発覚した問題】
【工事の規模】(公式資料より) この工事では、大型ダンプトラック(10トン)約7,444台分の土砂が搬入されました。 盛土約44,644㎥、切土約4,241㎥の土砂が扱われています。
そして2026年3月、最も深刻なことが判明します。
工事現場の土から、ヒ素・フッ素・ホウ素が基準値を超えて検出されたのです。
▶ 産経新聞(2026年3月5日) https://www.sankei.com/article/20260305-2QRWGWNVYRIBHG4YRW7W6QTCSU/
北海道はすぐに調査命令を出しました(2026年3月19日)。
現時点では「本州からの土が汚染の原因」とは断定されていません。
原因として考えられるのは2つです。
① もともとその土地が汚染されていた(自然由来) 北海道の火山性地質には、ヒ素などが自然に含まれることがあります。
② 外から持ち込まれた土が汚染されていた 公式資料によると、この工事では大型ダンプトラック(10トン)約7,444台分もの土砂が外部から搬入されています。これだけの量の土がどこから来たものなのか、民間ルートで調達された場合、その出所を誰も記録していません。
しかし、重大な問題があります。 今回行われた調査は「基準値を超えているかどうか」を確認するものでした。 「自然由来かどうか」を判定するためには、それとは別に、周辺地質との比較・土地の履歴調査・汚染の広がりの確認が必要です。 現時点の調査命令はそこまで求めていない可能性があります。
つまり、検出された汚染が「もともとの土地のもの」なのか「外から持ち込まれた土のもの」なのか、今の調査では答えが出ないのです。
これは今回の残土問題の核心です。民間ルートで土が持ち込まれていた場合、その土の出所を誰も記録していないため、原因究明は極めて困難になります。
調査結果(期限:2026年7月16日)が出るまでは断定できませんが、 「正体不明の土が管理されないまま、日本最大の湿原のそばに埋められた可能性がある」 ということは、制度的に十分あり得るのです。
管轄がバラバラで、誰も全体を見ていないからです。
本州の工事現場(国土交通省・建設行政)
↓
積み出し港(港湾管理者・港湾行政)
↓
海上輸送(海上保安庁・海事行政)
↓
北海道内の港湾(釧路市・別の管轄)
↓
陸揚げ後のトラック輸送(道路行政)
↓
造成現場(北海道・環境行政)
これだけの省庁・管轄をまたぐのに、 「この土の品質と行き先」を一貫して追う仕組みが存在しません。
さらに、全国で残土条例を持つ自治体は市区町村レベルでも約378(全体の約4分の1)。 (出典:一般財団法人地方自治研究機構、令和5年3月時点) 北海道には都道府県レベルの残土条例がありません。
三重県は令和元年(2019年)12月に残土条例を制定し、2020年4月から施行しました。 理由はこうです。
「三重県では、港湾を経由して紀北町・尾鷲市地域に都市圏から大量の土砂等が搬入されている」
港経由で本州の土が地方に流れ込む問題は、 釧路よりずっと前から三重で起きていて、三重は条例で対処しました。
北海道は、その教訓が活かされなかったとも言えます。
国は「UCRなどで適切に管理している」と言います。 でもそれは公共ルートの話だけです。
民間ルートで来る土は、管理の網の外にあります。
地方自治体が独自の残土条例を作るのは、 「国の制度が民間の動きをカバーしきれていない」 と肌で感じているからです。
今回の釧路の問題は、その制度の空白が 日本最大の湿原のすぐそばで現実になった事案です。
釧路湿原は、ラムサール条約に登録された日本最大の湿原です。 一度汚染されたら、取り返しがつきません。
「捨て場に困った土の行き先」が、国際的な自然遺産であってはならないはずです。
この記事は、釧路港への改良土搬入の仕組み・建設発生土の規制制度・残土条例の現状・釧路湿原メガソーラー問題の経緯を調査した内容をもとに作成しています。土壌汚染の原因については現在調査中(北海道による調査命令、2026年7月16日期限)であり、断定的な記述は避けています。

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キムラ ハヤト/43歳/男
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