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自衛官への敬意を欠いた発言に思う

2026/6/18

先日、名古屋大学の学園祭「名大祭」で予定されていた自衛隊ブースの出展が、直前になって中止された件について書いたばかりである。名大祭実行委員会のホームページでも、6月13日に予定されていた自衛隊ブースが「諸事情により」中止になったと発表されている。報道によれば、自衛隊側は災害派遣活動などを紹介する予定だったが、大学職員組合の反対声明などを受けて急きょ見送られ、防衛省は「極めて遺憾で看過できるものではない」との見解を示した。
自衛隊は、国防だけでなく、災害時には被災地に入り、住民の命と暮らしを守る大切な存在である。能登半島地震をはじめ、地震、豪雨、台風、土砂災害など、私たちは何度も自衛隊の活動に助けられてきた。そうした存在を、大学祭の場から排除するかのような動きには、強い違和感を覚えた。
そのような中で、今度は国会で、立憲民主党の古賀千景参議院議員が、自衛官をめぐり「経済的に厳しい子どもたちが自衛隊に行く」「豊かな子どもたちは自衛隊とかにならない」と発言したという。発言直後に撤回・謝罪したとはいえ、小泉進次郎防衛大臣は「自ら志願して自衛官になった方々への冒瀆に当たる」と強く批判した。報道では、立憲民主党も古賀氏を厳重注意処分とし、文教科学委員会の筆頭理事の任を解いたとされている。
私は、この発言は極めて不適切だと思う。
もちろん、家庭の経済状況が進路選択に影響することはあるだろう。自衛隊に限らず、大学進学、就職、公務員、民間企業、専門学校など、若者はそれぞれの家庭事情、本人の希望、将来設計の中で進路を選んでいる。
しかし、だからといって「経済的に厳しい子どもたちが自衛隊に行く」「豊かな子どもたちは自衛隊にならない」という言い方は、あまりにも乱暴である。そこには、自衛官という職業に対する敬意が感じられない。むしろ、自衛隊を「やむを得ず選ぶ場所」であるかのように見ている印象すら受ける。
自衛官は、自ら志願し、厳しい訓練を受け、国民の命と安全を守る仕事である。災害時には危険な現場に向かい、国際情勢が不安定な中では国の守りの最前線に立つ。家族もまた、不安を抱えながらその任務を支えている。
そのような人たちに対して、国会議員が不用意に職業差別とも受け取られかねない発言をすることは、決して軽く見てよい問題ではない。
発言直後に訂正したからよい、という話でもない。むしろ、とっさに出た言葉だからこそ、その人の中にあるものが見えたのではないか、と受け止める人がいても仕方がない。普段から自衛隊という組織や自衛官という職業をどのように見ているのか。その根っこの部分が問われているのだと思う。
平和を願うことと、自衛隊を軽んじることはまったく違う。
戦争を避ける努力は必要である。平和教育も大切である。しかし、平和を語るのであればなおさら、現実に国民の安全を支えている人たちへの敬意を忘れてはならない。自衛隊を頭ごなしに否定したり、自衛官を特定の家庭環境と結びつけて語ったりすることは、平和の議論を深めるどころか、社会に不要な分断を生むだけである。
小泉防衛大臣は、2025年度の自衛官などの採用者数が1万1177人となり、前年度より増加したことにも触れ、「防衛力の基盤は人だ」と述べたと報じられている。少子化の中で、人材確保は自衛隊にとっても大きな課題である。だからこそ、処遇改善や勤務環境の整備はもちろん、社会全体で自衛官を正当に評価する空気をつくることが重要である。
自衛隊に対しては、さまざまな意見があってよい。防衛政策についても、装備や予算についても、国会で厳しく議論することは当然である。
しかし、そこで働く一人ひとりの自衛官を見下すような発言は許されない。自衛官にも人生があり、家族があり、誇りがある。そこに想像力を持てない政治家に、国民の命と暮らしを語る資格があるのか、私は強い疑問を感じる。
名大祭の件に続き、今回の発言もまた、自衛隊に対する一部の偏見が表に出た出来事のように思えてならない。
災害が起きれば「自衛隊に来てほしい」と願う。けれど、平時には自衛隊を遠ざける。若者が自衛官を志せば、その選択をどこか上から目線で語る。そうした態度は、あまりにも都合がよすぎるのではないか。
私たちの暮らしは、目に見えないところで多くの人に支えられている。消防、警察、医療、福祉、そして自衛隊。危険や困難を引き受けてくれる人たちがいるから、私たちは日常を送ることができる。
だからこそ、まず必要なのは敬意である。
自衛官を政治的な好き嫌いで語るのではなく、国民の安全を守る職業として正当に評価する。意見の違いがあっても、そこで働く人たちの尊厳を傷つけない。政治家であれば、なおさらその姿勢が求められる。
今回の発言は、単なる言い間違いでは済まされない。自衛隊に対するまなざし、そして国を守る仕事への敬意が問われている。私はそう感じている。

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