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【川越市】ふるさと納税は本当に地域のためになっているのか? 返礼品競争と税のムダを考える

2026/6/25

先日、ABEMA Primeでふるさと納税をめぐる議論を見ました。

番組では、ふるさと納税の寄附額が過去最大規模になっている一方で、自治体全体で見ると住民税控除や経費を差し引いた結果、赤字になっているという話が紹介されていました。

特に気になったのは、ポータルサイト事業者に支払う手数料です。

動画では、ふるさと納税の仲介サイト側に支払われる手数料収入が、取扱額の約11.5%、金額にして1,379億円にのぼるという数字も紹介されていました。

もちろん、制度を利用して地域産品を知ってもらう、地方にお金を回す、自治体が自ら魅力を発信する努力を促す、という面はあります。

しかし一方で、制度本来の意義を超えて、返礼品合戦になってしまっているのではないか。さらに、その途中で一部のポータルサイト運営会社に大きな中間マージンが流れているのではないか。

私はここに強い違和感を持っています。

まず、ふるさと納税とは何か

ふるさと納税は、本来、自分が生まれ育った地域や応援したい自治体に寄附をする制度です。

寄附した人は、自己負担2,000円を除いた一定額について、所得税や住民税の控除を受けることができます。

制度の理念としては、都市部に集中しがちな税収を地方へ回すこと、出身地や応援したい地域を支援すること、地方自治体が地域の魅力を発信することなどが挙げられます。

この理念自体は、理解できます。

しかし、現実には「どの自治体を応援したいか」よりも、「どの返礼品が一番お得か」が前面に出てしまっているように感じます。

牛肉、米、海産物、果物、ポイント還元。

こうした返礼品競争が過熱すればするほど、制度は「寄附」から離れ、実質的には税金を使った通販サイトのようになってしまいます。

川越市ではどうなっているのか

では、埼玉県川越市ではどうでしょうか。

川越市は令和6年度、ふるさと納税として24,628件、約6億864万円の寄附を受けています。

寄附金は、子ども・子育て、福祉・保健・医療、教育・文化・スポーツ、交通、観光、環境、地域社会など、さまざまな事業に活用されています。

たとえば、子育て安心施設「すくすくかわごえ」の運営、公立保育所の給食食材費や設備修繕、児童センターの運営、市内循環バス「川越シャトル」の運行、川越まつり会館の維持管理などにも活用されています。

ここだけ見ると、ふるさと納税は川越市にとってありがたい財源のように見えます。

しかし、もう一つ見なければならない数字があります。

それが、川越市民が他自治体へふるさと納税をしたことによる、川越市の住民税控除額です。

令和6年度、川越市への寄附金額は約6億864万円でした。

一方で、川越市民のふるさと納税による寄附金控除額は約13億410万円です。

つまり、単純に見ると、川越市は約6.1億円を受け取っている一方で、約13.0億円分の住民税が控除されていることになります。

差額は約6億9,546万円

川越市は、ふるさと納税において流出超過(赤字)の状態にあると言えます。

川越市としては、制度がある以上、取り組まざるを得ない

ここで難しいのは、「だから川越市はふるさと納税をやめればいい」とは単純に言えないことです。

制度が存在している以上、他自治体は返礼品を磨き、ポータルサイトを活用し、全国から寄附を集めようとします。

その中で川越市だけが何もしなければ、川越市民の税収は市外に流出し続ける一方になります。

だから川越市として、ふるさと納税に取り組むこと自体は理解できます。

実際、川越市は市内で生産・加工している商品や、市内で提供される飲食・宿泊などのサービスを返礼品として募集しています。

また、旅先納税「小江戸かわごえe旅ギフト」のように、川越を訪れた人がスマートフォンで寄附し、市内加盟店で使える電子クーポンを受け取れる仕組みも導入しています。

これは、単に物を送って終わりではなく、川越に来てもらい、市内で消費してもらう仕組みです。

観光都市である川越らしい取り組みとして、一定の意義はあると思います。

しかし、返礼品合戦には反対です

一方で、私は本来の意義を逸脱した返礼品合戦には反対です。

「どれだけお得な返礼品を用意できるか」
「どれだけポータルサイト上で目立てるか」
「どれだけ寄附者を奪い合えるか」

こうした競争が過熱すれば、結局は自治体同士の税収の奪い合いになります。

しかも、その途中でポータルサイト事業者に手数料が支払われます。

本来、市民サービスや地域づくりに使われるべきお金の一部が、制度運営の中間コストとして外部の事業者に流れていく。

私は、この構造をあまり良いものだとは思っていません。

もちろん、サイト運営にもシステム費、決済費、広告費、人件費がかかることは理解します。

ただ、それでも「寄附」という名の制度の中で、巨額の中間マージンが生じている現状は、もっと厳しく見直されるべきです。

税を集めて、配って、その途中で目減りする構造

私が最も問題だと思うのは、政府が一度多く税を集め、それを再分配する過程で、さまざまなコストが発生している点です。

税金を集める。

制度を作る。

自治体が返礼品を用意する。

ポータルサイトに掲載する。

広告費や手数料がかかる。

配送費もかかる。

そして最後に、寄附者に返礼品が届く。

この一連の流れを見ていると、「それなら、はじめから税を多く取らない仕組みにした方が効率的なのではないか」と感じます。

私の現段階での考え方

私は基本的には、小さな政府を志向しています。

もちろん、政府には重要な役割があります。

防衛、治安維持、司法、外交、災害対応、基礎的なインフラ整備、最低限の福祉などは、政府が責任を持つべき分野です。

しかし、それ以外の分野まで政府が大きく関与し、税を集め、補助金や制度を通じて再分配し、その途中で大きな事務コストや中間マージンが発生する。

こうした構造は、できるだけ小さくしていくべきではないでしょうか。

市場でできることは市場に任せる。

地域の魅力発信も、基本的には民間の創意工夫を活かす。

行政は、本当に必要な部分に集中する。

その方が、社会全体として効率的で健全だと考えています。

川越市に求めたいこと

では、川越市はどうすべきでしょうか。

現段階では、川越市だけがこの制度から撤退することは現実的ではありません。

制度がある以上、川越市も一定程度は活用せざるを得ないでしょう。

ただし、その活用の仕方は厳しく問われるべきです。

第一に、返礼品競争に過度に乗らないこと。

川越市は、単なる「お得な物品」ではなく、川越の歴史、文化、観光、地域産業につながる返礼品や体験型サービスに重点を置くべきです。

第二に、ポータルサイトや委託事業者に支払う経費の透明化です。

寄附額が増えたとしても、どれだけが市の実収入になり、どれだけが返礼品費用・手数料・広告費・委託費に消えているのか。

ここを市民にわかりやすく示す必要があります。

第三に、川越市民の税収流出を正面から説明することです。

川越市への寄附額だけを見れば、約6億円を超える成果があります。

しかし、川越市民のふるさと納税による住民税控除額は約13億円です。

この差額をどう考えるのか。

市としても、市議会としても、しっかり検証すべきです。

第四に、旅先納税のような市内消費型の仕組みは、費用対効果を見ながら伸ばしていくことです。

川越を訪れた人が市内で食事をし、買い物をし、宿泊し、体験をする。

その結果、市内事業者の売上につながるなら、単なる返礼品配送よりも地域経済への波及効果は見えやすくなります。

ふるさと納税を「寄附」に戻せるか

ふるさと納税は、制度として完全に悪いものだとは思いません。

応援したい自治体に寄附する。

災害支援に使う。

地域の文化や伝統を守る。

観光や産業振興につなげる。

こうした使い方には意味があります。

しかし、返礼品目当ての制度になりすぎれば、本来の寄附の精神からは離れていきます。

そして、税を集めて配る過程で大きな無駄が生じるなら、制度そのものの見直しも必要です。

川越市としては、制度がある以上、賢く活用する必要があります。

しかし同時に、市民の税収がどれだけ流出し、どれだけの経費がかかり、実際にどれだけ地域に残っているのかを、市民にわかりやすく説明する責任があります。

私は、ふるさと納税を「寄附」の本来の姿に近づけるべきだと考えます。

そして、行政が税を集めて複雑に再分配する仕組みよりも、市民や事業者が自分のお金を自由に使い、地域経済が自然に回っていく仕組みを大切にしたい。

川越市のふるさと納税も、寄附額の多寡だけでなく、制度の本質、経費の透明性、市民への説明責任という観点から、引き続き注視していきたいと思います。

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著者

徳宮 勇気

徳宮 勇気

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肩書 フリーランス / 自衛隊支援協会理事長
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