上野 がく ブログ

【情報公開請求】非公開文書から読み解く鎌倉市役所新庁舎基本設計委託業務の最優秀提案者決定の過程の分析

2024/10/29

1.はじめに
こんにちは。県庁の星、上野がくです。鎌倉市役所新庁舎の基本設計委託業務の委託先を決める二次審査のプレゼンテーションが2024年9月1日に実施されました。そして審査の結果、FUチーム「鎌倉ONE」(株式会社日建設計)が最優秀提案者に選定されました。今後、市議会12月定例会での議決により、鎌倉市役所は日建設計と約3億円の契約を結ぶことになります。外観は次の図のようになっています。

当初から提出されていた事業実施方針に関する提案書FUチーム「鎌倉ONE」

2.市民を軽視した業者

鎌倉市役所は、二次審査に先立って、各行政センター等で4つの提案概要書を掲示し、市民から意見募集を行いました。そして、市民からの意見は二次審査での参考にするとされていました。FUチーム「鎌倉ONE」については、提案概要書で平屋建てと思われるイラストが提示されていたため、市民からの意見は疑問視するものがほとんどでした。ところが、二次審査のプレゼンテーションで5階建てであることが明らかなりました。この経緯から、上野がくは、FUチームは市民を軽視したと理解しています。

FUチームは、プレゼンテーションで審査委員から質問を受け、市民利用が重要であるから、そこだけを示したと説明しましたが、到底納得のいく説明ではありません。我々市民は建築や設備を見ても仕方がない、理解できないと思っているのでしょうか。いずれにしても、本来の5階建てのプランに対して市民が意見を表明する機会は失われたわけです。
また、鎌倉市役所は何もペナルティを課さなかったどころか、最優秀に選定しているのですから、市民軽視と言われても仕方がないと思います。FUチームの応募の時点で、先ほど示した「事業実施方針に関する提案書」が鎌倉市役所に提出されていたので、提案概要書の再提出を求めるべきだったのではないでしょうか。

図の上半分のイラストが提案概要書として行政センターなどで掲示された。

3.情報公開請求を行いました

もう一つ疑問がありました。FUチームのどこが評価されたのかです。上野がく個人としては、WAチーム「市民を守り・つなぐ・やさしい・丘陵型庁舎」に最も共感していました。そこで情報公開制度を活用して、非公開の資料を入手して、選定の理由を探ることにしました。なお、上野がくが担当課にこれらの資料を自主的に公開する予定はないか聞いたところ、予定はないとの説明がありました。

ちなみに、情報公開請求書を提出する前に、市の担当者とやりとりをして、対象となる文書を検討してもらいました。担当者の方は、こちらの意図を分かってくださり、数日で文書を特定することができました。上野がくが神奈川県庁で働いていたときに、情報公開請求の対応を何件かやりましたが、通常業務にプラスの業務になるので、とても大変です。できるだけ必要な文書だけに絞ってお願いしたいという思いがありましたので、事前の相談は欠かせないのです。

上野がくが10月9日に行政文書公開請求書を提出して、市役所は10月18日に行政文書一部公開決定通知書を施行しています。請求から公開決定まで原則15日以内のところ9日間だったので、担当者の方にはスムーズに対応していただいたと感謝しています。また、開示された資料では、発言した委員の名前と3位・4位の業者名は非公開(黒塗り)でした。これについては、情報公開制度のルールに則っており、適切な対応と理解しています。

4.非公開資料の分析概要

まず、委員ごとの採点の内訳と評価点の順位を見てみましょう。4つの大項目が設定されており、その合計点(平均点)で優劣を決定します。実施方針と技術提案に大きな配点がされていることが分かります。独創性などは余り選定に影響しなかったと考えていいでしょう。また、委員ごとの採点を見てみると、委員1がFUチームに490.0点、SAチームに762.5点とSAチームを評価している一方で、委員4はFUチームに755.0点、SAチームに370.0点とFUチームを高評価しており、委員によって評価が分かれていることが分かります。

 

委員の評価を順位にしてみると、評価のばらつきがより鮮明になります。赤が高い評価、青が低い評価です。

8人の委員の採点結果と議事録を分析すると次のことが言えます。

(1)委員が高評価とする提案がバラバラであった。1位評価の数は、FUチームが3人、SAチームが3人、3番目が0人、4番目が2人であった。これは委員の専門分野が異なることによる評価ポイントのバラつきと考えられる。

(2)各委員の評価点は、平均は約600点、標準偏差31点であり、大きなばらつきはなかった。したがって、極端に偏った評価をした委員はいなかったといえる。

(3)一次審査から、結果的に順位に変動はなかった。一次審査では1位FUチーム256.4点、2位SAチーム228.2点、3位217.9点、4位206.6点だった。市には事業実施方針に関する提案書集が提出されていた。

(4)最高得点のFUチームの提案について問題点が指摘され、今後の設計に当たって意見を付して、最優秀とする決定がなされていた。

5.審査会の委員の専門分野

新庁舎等基本設計者等選定審査会の委員は8人で、専門分野は次のとおりです。(1)経営学・オフィス学(オフィス・働き方)(2)地震学・災害情報(防災)(3)環境政策(環境)(4)建築デザイン・都市デザイン(建築計画・まちづくり・都市デザイン)(5)建築デザイン(建築意匠)(6)建築環境工学(住環境・省エネルギー)(7)ランドスケープ・都市デザイン(造園・都市計画)(8)行政学・公共政策(DX・働き方)なお、この番号と採点表で示した委員の番号は一致しませんので、留意ください。

6.審査会の議事録の概要

次に、審査会での議論のポイントを見てみましょう。

(1)市役所への要望

市がどこまで覚悟を持ってDXにチャレンジしていくかを定めることが重要。今回は曖昧な状態で募集要項を公開している。業務内容によってDXや職場空間の使い方が変わってくることを考慮した検討が必要。

職員が高いパフォーマンスを発揮できるようにすることが、市民の価値創造に繋がる。また、市と市民の共創・協働によって市全体の価値創造を優先すべきであって、市長が市民に説明する際に、コワーキングスペースや市民利用スペースという近隣の一部市民のための価値という誤った説明をすることがないようにしてほしい。

(2)各チームの評価

(FUチーム)DXの観点からは、これまでバラバラに提供されていたサービスが一つに集約されることで効率化され、優良なサービスがどこにいても提供されることで市民サービスの体験向上に繋がるという高い評価を得た。一方で建築の観点からは、オフィスのレイアウトの柔軟性がないことや、中間免振を導入することによって市民利用ゾーンと執務ゾーンが分割されてしまうことに懸念を示されている。その点については、職員の意見を聞きたいとの発言があった。また、平時の防災の見せ方について提案がなく、免振の対象外となる図書館の書籍が落下する恐れと臨時診療所機能への疑問が示された。

(SAチーム)真ん中の高い天井を市民が使いこなせないという指摘があった。評価項目ではないが、泣き塔や景観のデザインにより鎌倉をよく理解しているという意見があった。

(WAチーム)グリーンインフラや景観として優れているという意見と、スロープが過大な設備であるとの指摘があった。

(KAチーム)DXの評価が高かった。切通しで消防機能が分断されている点で使い勝手が悪いことや、建築と景観の計画が整合していなかったという指摘があった。

(3)議論のまとめ

各委員の採点でここまで点差が開き、FUチームが1位となっている。その割に、ここにきて中間層免震について異論ばかりが出ている。本審査会の結論としては、点数が出ている以上、FUチームを1位と決めるほかないと考える。FUチームの提案において、中間層免震は必ずしもゆるがせにできないものではなかったと理解しており、同チームを最優秀提案として選定しつつ、中間層免震について今後のDXに関する情勢の変化や、庁舎としての使い勝手を考慮した際に疑義なしとはしないため、今後の設計に当たって再考を促すという意見を付記することをもって、本審査会の結論とする。

7.2024年10月市長定例記者会見において

松尾市長は定例会見で日建設計案の高評価の点だけ説明していました。市民の理解を深めるための基本設計業務だったはずなのですが、市民に対して情報発信が十分ではないように思います。市民が情報を持っていなければ、市民との対話による設計という理念は空っぽのケーキ箱のように空疎になってしまいます。市役所を深沢地区に移転する方向で進めるのであれば、もっと危機感を持って取り組んだ方が良いように思います。

8.行政は市民にすべてを語るべき

手続きを踏んで審査会が決めた結果がこれですという行政の進め方では、市民の理解など進むはずがありません。最優秀提案者となった日建設計の原案には、2階と3階の間に中間免振層を入れることによって、上下の一体性が損なわれることと2階以下では免振がないため図書館の書籍の落下が危惧されています。また、建築の構造によりスペースを柔軟性に変更しにくいという欠点が指摘されています。

また、FUチームはDXを評価されたのですが、鎌倉市に対しては、どこまでDXにチャレンジするのかが不明であるという根本的な指摘を受けています。こうした審査会では委員が一致して選定するのが一般的だと思いますが、今回は8人中3人しか1位としなかった日建設計を苦渋の決断で選定したというべき状況だったのです。そして、意見を付すことを条件にして選定したのです。

こうした課題を市民に説明したうえで、今後のワークショップなどで日建設計と職員・市民の対話を促すというのが、行政のあるべき姿であると上野がくは考えます。そうなっていかないのは、どうしてなのでしょう。

この記事をシェアする

著者

上野 がく

上野 がく

肩書 鎌倉市議会議員(1期)、総務常任委員会副委員長、会派「鎌倉前進の会」所属、元神奈川県職員、町内会役員(防災部長)、防災士
党派・会派 無所属

上野 がくさんの最新ブログ

上野 がく

ウエノ ガク/47歳/男

月別

ホーム政党・政治家上野 がく (ウエノ ガク)【情報公開請求】非公開文書から読み解く鎌倉市役所新庁舎基本設計委託業務の最優秀提案者決定の過程の分析

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode