2025/11/15
「長い間、教員を恨みながら生きてきた。でも今、教員を目指しています」
11月中旬、茨城県東海村。ステージに立つ大学生の声が、会場を静かに包み込んだ。
秋の深まりを感じるこの日、全国各地から若者たちが集まっていた。日本中のユースカウンシル(若者議会・若者会議など)で活躍する若者、それを支える自治体職員やNPO関係者、そして海外からのゲスト。
ここで開かれたのは、初めての全国ユースカウンシルサミット——若者の社会参画を推進する年に一度の全国イベント「わかもののまちサミット」の一環として企画された、記念すべき第1回だった。
11月15日・16日の2日間。"若者もまちづくりの主役だ!"というテーマを掲げ、熱い議論と交流が繰り広げられる。
わかもののまちサミット2025@東海村 https://wakamachi.org/2025/09/11/tokai/
孤独から、つながりへ——四ヶ所壮汰さんの願い
開会の挨拶に立ったのは、全国ユースカウンシル連盟の四ヶ所壮汰さんだ。
「代表として活動する中で、『ユースとして何ができるのか』『どこに限界があるのか』と悩んでいた時期がありました」
スケボーパーク建設を行政に提案しても、すぐに成果は出ない。ヤングケアラー支援の活動では、問題が深刻なほど行政が主導権を握り、自分が関われる範囲が限られていく。
壁を感じていた四ヶ所さんを変えたのが、他地域の若者との出会いだった。
「新城市には若者に1,000万円の予算提案権がある。京都では若者自身が主体的にまちづくりを企画している。全国の仲間と出会い、自分が抱えていた限界は思い込みだったのかもしれないと気づけたんです」
だからこそ、このサミットに3つの願いを込めた。
① ネットワーク構築 —— 孤軍奮闘する若者たちが横につながり、「仲間がいる」と実感できる場を。
② 学びの共有 —— 各地の事例から刺激を受け、自分たちの地域で活動の影響力を高めるきっかけを。
③ 次世代への促進 —— 先行事例を知り、これから若者参画に取り組もうとする人々が勇気を得て、自分の街で実践を始められるように。
「かつての僕がそうであったように、この2日間で仲間と出会い、皆さんの地域がさらに良くなることを願っています」
会場は静かな期待に包まれた。
全国ユースカウンシル連盟 https://youthcouncil.jp/
最初に登壇したのは、群馬県の大学生・朝井さんだ。
彼女が参加したのは群馬県高校生リバースメンター制度——高校生が知事と一緒に県の政策を考え、若者の視点で問題点を政策に反映していく仕組みだ。
性的マイノリティである自身の経験から、「性的少数者の生徒が生きやすい未来」をテーマに活動してきた。今も大学生として一人で活動を続け、県教育委員会の会議で100人を超える教員の前で語る機会も得ている。
だが、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
「私は小中学校時代に、教員や生徒からいじめを受け、人を信じられなくなっていました」
会場の空気が変わる。
「その中で、初めて『この人なら信じてみたい』と思えた先生が、リバースメンター制度を紹介してくれたんです」
恨みから、希望へ
そして、会場が息を呑む言葉が続いた。
「私は長い間、教員を恨みながら生きてきました。それでも今、教員を目指しています」
「それは、過去に自分を傷つけた教員に仕返ししたいからではなく、自分が恨んできた教育現場を、自分の手で変えたいと思うようになったからです」
見ているだけの傍観者でいたくなかった。リバースメンター制度に参加していなかったら、今もずっと何もせず、ただ悩んでいただけだったかもしれない。
「子どもの未来を、少しでも明るくするために。私自身も頑張っていきたいと思います」
会場は大きな拍手に包まれた。
当事者の声を聞くために必要なこと
後のディスカッションで、朝井さんは大切なことを語った。
「『予算はいらないから、とにかく話を聞いてほしい』——その思いが一番強かったです。困っているのに、なぜ誰も気づいてくれないの? なぜ何も変わらないの? その思いを誰かに伝えたい、分かってほしい。それだけで応募しました」
性的少数者、不登校、いじめ経験。当事者が声を上げるには大きなリスクがある。朝井さん自身、「朝井」は仮名で、両親から「顔と本名は出さないで」と言われている。
「行政が声を聞きたいのであれば、匿名性が保障される場をつくることが最も重要です。本名を出さなくてよい、顔を出さなくてよい、安全に話せる環境——この条件が整ってはじめて、当事者は声を出せます」
リバースメンター制度は、そうした切実な思いを持つ若者たちに、安全な場を提供している。
学校指定のスラックスなのに「風紀が乱れる」と傷つけられ…性的少数者やいじめ問題に立ち向かう大学生【朝井葵・18歳】 https://steenz.jp/46215/ 高校生リバースメンターとは?https://www.shoukasonjuku.com/highshool-reverse-mentor
第2章:年間1,000万円を動かす——新城市・瀬野さんの挑戦 欧州の視察が生んだ奇跡
愛知県新城市から登壇したのは、大学2年生の瀬野さん、19歳。人口約4万人の"ど田舎"と笑う新城市だが、ここには驚くべき仕組みがある。
新城市若者議会——若者が政策をつくる組織だ。
市長の付属機関として若者政策を議論し、政策を立案して答申。議会で議決されれば、翌年度に実際に実行される。そして、年間1,000万円の予算枠が用意されている。
会場からどよめきが起きた。
なぜ新城市にこの仕組みが生まれたのか。
2012年、ヨーロッパで開催されたニューキャッスルアライアンス会議に新城の若者が参加し、現地で若者議会が当たり前のように存在することを知った。刺激を受けた若者たちが「新城でも若者の意見を実現できる場が必要だ」と感じ、新城ユースの会を立ち上げた。
それを後押ししたのが、当時の市長が掲げた"若者が活躍するまち"という理念。2015年4月、新城市若者議会が誕生した。YouTubeで30万再生を記録
瀬野さんが高校2年生の時に提案した政策——「家族がつなぐ 新城思い出授業」。
新城には観光地がたくさんあるのに観光客が来ない。原因は、新城が知られていないこと。そこで、YouTubeの動画広告で新城市の観光地をPRする案を作った。
この政策案は議会で議決され、動画が制作・公開された。その動画は30万回再生を突破している。
「プリンのカラメルと生地をつなぐ部分」
「先輩から聞いた言葉が印象に残っています。『若者議会は、プリンの"カラメル"と"生地"をつなぐ部分』——カラメルが行政、生地が若者・市民。その間をつなぐのが若者議会の役割だと」
自分の意見を行政に届けると同時に、他の若者の声も拾って橋渡しをする。それが若者議会だという。
「アンケートで裏付けを取りますが、中心にあるのは"自分自身がやりたいこと"です。若者議会に入らなければ、ここまで深く自分の街のことを考えることはなかったと思います」 新城市若者会議 https://wakamono-gikai.jp/
第3章:劣等感から居場所へ——東海村・千葉さんの告白「私より劣っている人間はいない」
地元・東海村から登壇した千葉さんの言葉は、会場の心を深く揺さぶった。
「私はもともと、劣等感にまみれた人間でした。というか、劣等感しかありませんでした」
会場が静まり返った。
「口下手で、バカで、モラルも欠けていて、アガリ症。『私より劣っている人間なんて、この世にいないんじゃないか』と本気で思っていました」
誰かから認められることも、何かに挑戦することも、すべて無駄だと思っていた。
「でも、若者会議は、そんな"私という人間"を認め、受け入れてくれました」
3つの思いから生まれた居場所
東海村若者会議は、村の3つの願いから生まれた。
発足からメンバーは22人に増え、約8割が継続参加している。挑戦や失敗を受け入れてくれる居心地の良い場が、継続の理由だ。
高校生の「悩みを気軽に話せる場所がほしい」という声から生まれた「お悩み相談バー」(ノンアルコールのみ)、小中高生とのDIYプロジェクト、「東海村おすすめマップ」の作成——ユニークな挑戦が次々と展開されている。
そして今、千葉さんたちが目指すのが「若者の拠点づくり」だ。
「私を変えてくれた場所」
千葉さんの声が震えた。
「若者会議は、心から信頼できる最高の仲間たちと出会わせてくれ、私に『挑戦する勇気』と『挑戦できる機会』、そして『挑戦できる場所』を与えてくれました」
気づけば、若者会議以外の場でも挑戦できる人間に成長していた。
「若者会議は、私にとって大切な"居場所"です。かつて"マイナス"だった私を変えてくれた若者会議を、多くの人に知ってほしい。そして、私が愛したように、この場所を皆さんにも愛してほしい」
会場のあちこちで、頷きながら聞き入る人々の姿があった。
そして、ひときわ大きな拍手が送られた。 東海村わかもののまちづくり https://tokai-wakamono.com/
第4章:若者の権利を保障する——アイスランドからの学び 16年連続ジェンダー平等1位の国
海外からのゲストは、アイスランド大使館のルート・エイナルスドッティルさん。
アイスランドは世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で16年連続1位を獲得している国だ。その背景には、若い世代の声を尊重する文化がある。
エイナルスドッティルさんがかつて理事を務めていたアイスランド全国ユースカウンシル(LUF)には、子ども・若者に関係する46の団体が加盟している。地域のユースカウンシル、人権・環境団体、障害のある若者の団体、各政党の青年部まで含まれる。
LUFの中心理念は明確だ——「若者の権利を保障すること」。
そして、国として毎年、若者団体の活動を支える予算をきちんと確保している。若者たちが自律的に運営できるよう、安定した資金供給を国が保障しているのだ。
会場からは、驚きと感嘆の声が上がった。
アイスランドでは、選挙のたびに民主主義教育キャンペーンが実施される。選挙の1週間前、ほとんどの学校が参加し、教師と生徒が民主主義の仕組みや投票の判断基準について学び合う。
さらに、16歳〜18歳を対象にした模擬選挙も実施。どの政党が若者に人気があるのか、若者の考え方を知ることができる。
結果は国営テレビの全国放送で発表される。
「その理由は単純です。若者の意見も社会にとって非常に重要だと考えているからです」
選挙キャンペーンには全ての政党のリーダーが参加し、若者が求める権利や政策について回答する。若者たちは、政党の公約だけでなく、リーダーたちの生の反応を見て判断できる。
大統領が推薦するリーダーシップアカデミー
LUFが運営するリーダーシップアカデミーは、スピーチ、資金調達、組織運営などを学べるプログラムだ。若者たちは全員、自分が所属する若者団体の役に立つプロジェクトを一つつくり上げ、実行しながら卒業する。
このアカデミーは10年間続く取り組みで、昨年はアイスランド大統領から推薦を受けた。
首相に直接、政策を提言
昨年2月、加盟団体が集まり「政府がどのように国民参加をより活用できるか」についての政策文書を作成。総会で承認され、アイスランド首相に正式に提出された。
若者たちの声は、確実に政策に届いている。
さらにアイスランドは、北欧各国やヨーロッパ全体とも連携している。欧州評議会のユース諮問委員会では、若者が各国政府の担当者と"同等の発言権と投票権"を持ち、ヨーロッパ全体の若者政策をつくる意思決定プロセスに参加できる。
「私たちが創造性をもって協力し合うことで、本当に多くの良いことが生まれます。国際的なコラボレーションを通じて、互いに学び合える場がもっと増えていくことを願っています」
エイナルスドッティルさんの言葉は、希望に満ちていた。
大人たちからのメッセージ たかまつななさん——「もっと自信を持っていい」
コメンテーターとして登壇した笑下村塾のたかまつななさんは、全国のユースカウンシルを取材し、300人以上に話を聞いてきた。
「この場は本当に大事です。多くの若者は孤独に活動していて、横のつながりがありません。こうして集まって『こんな仲間がいるんだ』と思える機会は、とても貴重です」
たかまつさんのもとには、全国の高校生や中学生から「うちの自治体でもユースカウンシルをつくりたい」という相談が届く。だが、会ってくれない自治体が本当に多いという。
「だから、皆さんのようにすでに参加できていること自体、実はとても恵まれているんです。せっかく参加しているのだから、『ユースカウンシルに参加してこんなに良いことがあったよ』と周りに広げてほしい。その声を聞いた自治体が『じゃあうちでも!』と動くきっかけになるはずです」
そして、力強く言った。
「今日の発表を聞いて本当に思ったのは、もっと自信を持っていい、ということです。皆さんは確かに地域を少しずつ良くしていて、それは胸を張っていいことです。どうか堂々と、誇りを持って活動を続けてください」
会場は大きな拍手に包まれた。
子ども家庭庁・こみやまさん——「もっと声を届けてほしい」
子ども家庭庁のこみやまさんは、若者団体が抱える課題を調査し、国としてどのような支援ができるか検討を進めている。
「限られた予算の中で私たちができることは、若者団体が自力で継続的に活動できる土壌をつくることです。勉強会の開催、企業とユースカウンシルをつなぐ橋渡し、団体同士が学び合える交流の仕組み——そうした支援を検討しています」
こみやまさんは続けた。
「現状の日本では、若者団体が自発的に活動する文化・土壌がまだ十分に根付いていません。だからこそ、今日来ている皆さんにも、もっと声を上げてほしい。遠慮なく"暴れるくらい"声を届けてほしい。その声が全国に広がり、自治体や国が拾い上げ、共有し合いながら、より良い仕組みづくりにつながっていくと信じています」
子ども家庭庁も、今年新たに「民間連携係」を立ち上げ、NPO法人やユースカウンシルとの連携を進めている。
「これからも引き続き、たくさん声を寄せてください。国としても発信し、施策検討を進めていきます」
あなたも、次の一歩を
サミットを通じて浮かび上がったのは、「若者が変える未来」の確かな輪郭だった。
朝井さんは、いじめを受けた過去を乗り越え、教育現場を変える教員を目指している。
瀬野さんは、年間1,000万円の予算を動かし、30万回再生される政策を生み出した。
千葉さんは、劣等感にまみれていた自分を受け入れてくれた若者会議で、挑戦できる人間に成長した。
エイナルスドッティルさんは、若者の権利を保障する国の仕組みを見せてくれた。
"若者もまちづくりの主役だ"
このテーマは決してスローガンではなく、目の前で証明された現実だった。
あなたは、どう感じましたか?
このレポートを読んで、あなたの心は動いただろうか。
「自分の街にも、こんな場があったらいいな」と思っただろうか。
「若者たちを応援したい」と感じただろうか。
それとも、「自分も何かやってみたい」と思っただろうか。
発表者の一人は、こう語った。
「何も知らずに無関心でいた日常から、一度関心を持ってしまった以上、そこで終わらせたくない」
あなたも、今この瞬間、関心を持った。
ここで終わらせるか、次の一歩を踏み出すか——それは、あなた次第だ。
東海村若者会議が目指す「若者の拠点づくり」
千葉さんたち若者会議のメンバーは、村内に若者がいつでも集い、自由にアイデアを形にできる拠点を作ろうとしている。
その実現に向けて、既に動き始めている。
もしあなたが東海村の住民なら、彼らの情熱に触れたこの機会に、応援の輪に加わってみませんか。
若者会議の活動に参加してみる。SNSで応援メッセージを送る。村役場に「若者の拠点づくりを支援してほしい」と声を届ける。
小さな一歩でいい。
全国の若者たちへ
もしあなたが若者なら、自分の街にもユースカウンシルがあるか調べてみてほしい。
なければ、作ることを考えてみてほしい。「無理だ」と思う前に、新城市の若者たちがヨーロッパの視察をきっかけに若者議会を作った物語を思い出してほしい。
そして、既に参加している若者は、たかまつさんの言葉を思い出してほしい。
「もっと自信を持っていい。皆さんは確かに地域を少しずつ良くしている。それは胸を張っていいことです」
あなたの活動を周りに伝えよう。その声が、次の自治体を動かすきっかけになる。
自治体・教育関係者の皆さんへ
もしあなたが自治体職員や教育関係者なら、考えてみてほしい。
あなたの街には、声を上げられずにいる若者がいないだろうか。
朝井さんのように、「話を聞いてほしい」と切実に思っている当事者がいないだろうか。
千葉さんのように、「劣等感しかない」と思い詰めている若者がいないだろうか。
彼らに必要なのは、安全に声を上げられる場所と、その声を真剣に受け止める大人だ。
子ども基本法では「子どもの意見表明権」が明記されている。本来、すべての自治体がやらなければならないことだ。
予算は500万円や1,000万円あれば十分に良い活動ができる。その額さえ確保できない、ではなく、その額で未来が変わると考えてほしい。
一度始まって若者の声を聞けば、「これは続けなければならない」と必ず気づく。その機会を、ぜひあなたの街でも作ってほしい。
大人たちへ
若者の声に耳を傾けてほしい。
彼らは、私たちが思っている以上に、真剣に地域の未来を考えている。
彼らは、私たちが思っている以上に、責任を持って行動できる。
彼らは、私たちが思っている以上に、社会を変える力を持っている。
必要なのは、その力を信じて、場を提供し、背中を押すこと。
そして、失敗を受け入れ、一緒に考え、一緒に歩むこと。
きっと、東海村の未来は——
若者の声に耳を傾け、ともに考え、ともに行動することで、きっと東海村の未来はより豊かで色鮮やかなものになる。
それは東海村だけでなく、あなたの街も同じだ。
若者たちの情熱が紡ぐ未来を、私たち大人も一緒に応援していこう。
そして、あなた自身も、その未来を作る一員になろう。
今日、あなたは関心を持った。
明日、あなたは何をしますか?
※本レポートは、2025年11月15日に東海村で開催された全国ユースカウンシルサミットの内容をもとに作成しました。
【東海村若者会議についてもっと知りたい方へ】
東海村役場ホームページ、または「東海村若者会議」で検索してみてください。
【あなたの街でユースカウンシルを始めたい方へ】
全国ユースカウンシル連盟のホームページには、全国の事例や相談窓口の情報があります。
一人じゃない。仲間がいる。
さあ、次の一歩を踏み出そう。
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