2026/4/11
はじめに
消費税(附加価値税:VAT)は世界中で採用されていますが、その運用方法は国によって様々です。標準税率が20%を超える欧州諸国や、シンプルな単一税率を貫くニュージーランドなど、第4回では諸外国の事例を比較し、逆進性対策について考えます。
欧州諸国の軽減税率と「迷走」
フランスやドイツ、スウェーデンなどのEU諸国は、古くから軽減税率を導入しています。しかし、実際は良い結果をもたらすばかりではありませんでした。
• スウェーデンの事例:ホテルの宿泊は12%、会議目的の宿泊は25%、芸術家から直接買う絵画は12%、それ以外は25%など、区分が極めて複雑です。この結果、「どの税率が適用されるか」を巡る訴訟が絶えないという問題を抱えています。
• イギリスの事例:食品や新聞などを「ゼロ税率」とすることで逆進性を緩和していますが、その分、標準税率を引き上げざるを得ないという副作用が生じています。
専門家の間では、欧州の軽減税率は「失敗の経験」として認識されることも少なくありません。対象品目の選定には政治的圧力が働きやすく、必ずしも低所得者のためになっていないという調査結果も出ています。
「現代的VAT」の旗手:ニュージーランド
これに対し、一つの評価を受けているのがニュージーランドのGST(物品・サービス税)です。
その特徴は「単一税率・広い課税ベース・最小限の非課税」という、極めてシンプルな設計にあります。特定の品目を優遇するのではなく、制度を簡素に保つことで行政コストを抑え、低所得者への対策は税制以外の部分(社会保障給付など)で行うという考え方です。
逆進性対策の本命?「給付付き税額控除」
修士論文で特に注目したのは、カナダ等で導入されている給付付き税額控除です。
• アメリカ(EITC):就労所得のある低所得世帯に対し、税額を控除し、控除しきれない分を現金で給付する仕組みです。就労意欲を高める効果があるとも評価されています。
• カナダ(GSTクレジット):消費税の負担分を事後的に還付する制度です。確定申告書のチェックボックスに印をつけるだけで申請でき、世帯所得に応じて自動的に口座に振り込まれます。
これらの制度の共通点は、軽減税率のように「全員」を優遇するのではなく、「本当に支援が必要な人」にターゲットを絞って直接現金を戻すという点にあります。
第4回のまとめ
諸外国の事例を俯瞰すると、軽減税率などの複数税率は制度の不公平や複雑さを生み、再分配の手段としては効率が悪いことが分かります。一方で、給付付き税額控除のような「税と給付の融合」こそが、逆進性対策の有力な選択肢として浮上しています。
最終回となる第5回では、これまでの議論を踏まえ、日本が今後目指すべき税制の方向性と、給付付き税額控除導入への課題について提言します。
※論文本体をなるべく平易な言葉で要約していますので、必ずしも学説上正確な表現がされていないことをご了承ください。詳細は岩出和也へご質問ください。
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イワデ カズヤ/36歳/男
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