2026/5/11
\近年、特定の政治家や政党をアイドルのように応援する「推し活」的な政治参加が広がっています。
こうした現象は「ファンダム政治」とも呼ばれ、SNSの普及とともに、選挙や政治との向き合い方を大きく変えつつあります。
今回、メディア文化論やファン文化を研究する東京大学大学院の田中東子教授のインタビュー内容をもとに、この“ファンダム政治”について考えてみたいと思います。
■ SNS時代に拡大する「熱狂」
これまでも、カリスマ性のある政治家に支持が集まる現象は存在していました。
しかし現在は、SNSという新たなメディア空間が加わったことで、その熱狂が一気に拡大しています。
新聞やテレビとは異なり、SNSでは感情や勢いが瞬時に拡散されやすく、政治家側もマーケティング的な手法を活用しながら支持を集めています。
さらに、日本や韓国ではアイドル文化の影響もあり、
「応援する」「推す」という感覚が政治の世界にも入り込んでいると指摘されています。
■ 問題は「無批判な支持」
政治家を応援すること自体は悪いことではありません。
むしろ、政治に関心を持つ人が増えることは民主主義にとって大切です。
ただ一方で、“推し活”の感覚が強くなり過ぎると、
批判を受け入れなくなる
客観的な評価ができなくなる
「自分の推しだから正しい」と考えてしまう
といった状況に陥りやすくなります。
政治家は、税金の使い道や社会のルールを決める存在です。
だからこそ、支持している相手であっても、冷静に政策や行動を見極める視点が必要になります。
■ SNSが生み出す“白黒思考”
SNSでは、短い言葉で強い主張が拡散されやすく、
「味方か敵か」という極端な構図になりがちです。
全面支持か全面否定か
賛成か反対か
味方かアンチか
といった“白黒思考”が広がることで、冷静な議論が難しくなる傾向があります。
また、「いいね」の数が多い意見が“正しい”と感じやすい空間でもあり、多様な意見を丁寧に議論する環境が失われやすいという問題もあります。
■ 政治家にも求められる責任
政治家がSNSで発信すること自体は重要ですが、
SNSだけに依存した発信には注意も必要です。
SNSの投稿は、主にフォロワーや支持者に向けられるため、どうしても“身内向け”になりやすくなります。
しかし政治家には、自分を支持していない人に対しても責任があります。
そのため、
記者会見
取材対応
討論番組
など、幅広い場で説明責任を果たしていくことも大切だと指摘されています。
■ 有権者に求められる「情報との向き合い方」
SNSは便利な情報ツールですが、
放っておくと、自分が見たい情報ばかり表示される状態に陥ります。
これは、
「フィルターバブル」
「エコーチェンバー」
と呼ばれる現象で、自分と似た考えだけに囲まれてしまう危険性があります。
だからこそ、
SNSだけで判断しない
新聞やテレビのニュースにも触れる
情報の発信元を確認する
異なる立場の意見も見る
といった姿勢が重要になります。
■ 政治は“推し活”ではなく「是々非々」で
田中教授は、政治活動と推し活は分けて考えるべきだと指摘しています。
政治においては、
「好きだから全部正しい」
「嫌いだから全部否定」
ではなく、
良い政策は評価する
問題点はしっかり指摘する
という“是々非々”の姿勢が大切です。
支持と批判は、本来両立できるものです。
■ 最後に ― 直接対話の大切さ
SNSには、人と人をつなぐ良い面もあります。
一方で、短い言葉だけでは誤解や対立も生まれやすく、冷静な議論が難しい場面も少なくありません。
だからこそ、最後はやはり、
「直接会って対話すること」
の重要性が増しているのではないでしょうか。
顔を合わせて話すことで、白か黒かではない、互いの考えや背景を理解し合う余地が生まれます。
政治を“熱狂”だけで語るのではなく、
一人ひとりが冷静に考え、対話し、判断していくことが、これからの民主主義にはますます求められているように感じます。
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