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古賀千景議員の自衛官発言をどう見るか 一言だけで終わらせず、平和教育と政治的中立まで考えたい

2026/6/17

立憲民主党の古賀千景参議院議員による、自衛官に関する発言が大きな話題になっています。

報道では、「豊かな子どもたちは自衛隊にならない」といった部分が強く取り上げられ、SNS上でも批判が広がりました。私自身、防衛大学校に入校した元自衛隊員として、この発言には強い違和感があります。自衛官という職業を、家庭の経済状況と単純に結びつけるような言い方は、現場で働く自衛官やその家族、そして自衛官を志す若者に対して配慮を欠くものだと思います。

ただし、同時に思うのは、こうした話題こそ「一部の発言だけを切り取って終わり」にしてはいけないということです。まずは、ノーカット版を見てほしい。発言の前後に何が語られていたのか、どのような問題意識から出た発言だったのか、そして発言後にどう撤回・謝罪されたのか。そこまで見たうえで、自分の頭で考えることが大事だと思います。

そもそものテーマは「子ども向け防衛白書」だった

今回の質疑の本来のテーマは、防衛省が作成した子ども向け冊子「まるわかり!日本の防衛 ~はじめての防衛白書2024~」でした。

この冊子は、防衛省が発行する防衛白書の内容を、子どもにもわかりやすく伝えるためのものです。古賀議員には、おそらくこの冊子の内容や、学校現場での扱われ方に問題があるのではないか、という問題意識があったのだと思います。

つまり、もっと引いて見ると、今回の論点は「学校における平和教育や安全保障教育をどう扱うのか」「政治的中立をどう確保するのか」という話でもあります。

教育基本法では、子どもたちに政治的教養を身につけさせることは大事だとされています。一方で、学校が特定の政治的立場に偏った教育をしてはならないともされています。ここに、非常に難しいせめぎ合いがあります。

平和教育と政治的中立のせめぎ合い

この問題は、辺野古沖の事故をめぐる議論とも通じる部分があると思います。

平和教育は大切です。戦争の悲惨さを学び、命の尊さを考えることは、子どもたちにとって重要な学びです。しかし、その平和教育が特定の政治的立場に寄りすぎていないか。反対に、政治的中立を理由に、現実の安全保障や基地問題を教えることまで避けてしまっていないか。

ここはとても難しいところです。

「平和を大切にする教育」と「安全保障を現実的に学ぶ教育」は、本来は対立するものではありません。むしろ、両方が必要です。戦争を避けるためには、平和への願いだけでなく、国際情勢、軍事バランス、抑止力、外交、憲法、自衛隊の役割なども含めて、多面的に学ぶ必要があります。

ただ、それを本当にやろうとすれば、膨大な時間と努力が必要です。だからこそ、教育は難しいのだと思います。

ここで私の主観で少し述べますと、川越市議会を見ていると「安全保障を現実的に学ぶ教育」という観点が比較的弱く、バランスに欠けていると感じています。私は、そういったリアリズムに基づく安全保障の必要性は市や教育委員会に訴えていきたいと考えています。

防衛省の白書にも意義がある

私は、防衛省・自衛隊の立場から出された防衛白書にも、大きな意義があると思っています。

もちろん、それは防衛省が発行しているものです。だから、完全に中立な第三者資料というより、「防衛省の立場から見た日本の防衛」という性格を持っています。だからこそ、子どもたちには発行元をきちんと伝えたうえで読んでほしい。

「これは防衛省が作った資料です」
「防衛省はこういう見方をしています」
「では、別の立場からはどう見えるでしょうか」

そうやって読むことができれば、これは非常に良い教材にもなり得ます。

正直に言えば、自分が子どものころにこの冊子を読んで、どこまで理解できたかはわかりません。防衛や安全保障の話は、大人にとっても簡単ではありません。それでも、子どもたちが日本の防衛について考える入口として、こうした資料があること自体は大切だと思います。

発言は不適切。しかし、バッシングだけでは足りない

ここで改めて言いたいのは、私は古賀議員の発言を擁護するつもりはないということです。

「経済的に厳しい子どもたちが自衛隊に行く」
「豊かな子どもたちは自衛隊にならない」

このように主語を大きくして語るのは、明らかに不適切です。全ての自衛官が金銭的な理由で入隊したというのは、全くの誤りです。国を守りたい、人の役に立ちたい、災害派遣に感銘を受けた、航空機や艦艇に関心があった、規律ある環境で自分を鍛えたい。入隊理由は本当に人それぞれです。

ただし、一方で「一部の人が経済的な理由から自衛隊を選ぶことがある」というのも、現実としてあり得ます。

実際、私は防衛大学校を卒業した元自衛隊員ですが、周りにはそういう同期生もいました。他の国立大学に落ちて、防衛大を選んだ人。私立大学はお金の面で難しく、防衛大に来た人。家庭の負担を考えて、学費がかからず手当も出る道を選んだ人。

しかし、私はそれでいいと思っています。

最初から強烈な国防意識を持って入ってくる人だけが、自衛官に向いているわけではありません。むしろ、ある意味でドライな動機で入ってきた人のほうが、淡々と努力を続け、長く適応することもあります。そして、自衛隊での生活、教育、訓練、仲間との時間を通じて、国防の必要性や職業への誇りが少しずつ育っていくのだと思います。

入り口の動機が何であれ、その後に何を学び、どう成長するか。それが大切なのです。

一つの言葉で人を裁く前に

今回の件から、私たちが考えるべきことは二つあります。

一つは、自衛官という職業に対する敬意です。政策として防衛省を批判することは当然あってよい。防衛白書の内容を批判することも、学校での扱いを議論することも必要です。しかし、自衛官という職業そのものを、家庭環境や経済状況と結びつけて見下すような表現は、あってはならないと思います。

もう一つは、政治家の発言をどう受け止めるかです。一部の言葉だけを切り取って怒るのは簡単です。しかし、それだけでは社会全体がどんどん浅い議論になってしまいます。

発言は不適切だった。そこは批判されるべきです。

しかし同時に、ノーカット版を見て、何が主旨の質疑だったのか、どこで言い過ぎたのか、その後に撤回と謝罪があったのか。そうした全体像を見たうえで、自分の考えを持つ姿勢も必要です。

多面的な事実に基づく教育と議論を

私は、子どもたちには多面的な事実に基づいて学んでほしいと思っています。

平和教育も大切です。安全保障教育も大切です。自衛隊や防衛省の立場も知るべきですし、戦争被害や基地負担に苦しむ地域の声も知るべきです。どちらか一方だけを教えるのではなく、複数の視点を示したうえで、最後は自分で考える力を育てることが重要です。

これは学校教育だけの問題ではありません。私たち大人も同じです。

一つの発言、一つの切り抜き、一つの感情的な投稿だけで判断するのではなく、できるだけ一次情報に近づき、前後の文脈を確認し、そこから自分の考えを組み立てる。

今回の古賀議員の発言は、不適切なものでした。しかし、それをただのバッシングで終わらせるのではなく、平和教育、安全保障教育、政治的中立、自衛官への敬意、そして私たち自身の情報の受け取り方を考えるきっかけにしたいと思います。

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著者

徳宮 勇気

徳宮 勇気

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肩書 フリーランス / 自衛隊支援協会理事長
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