2026/6/14
出雲市議会で所属している政治グループの視察で静岡県熱海市に行ってきました。
熱海といえば、温泉が有名な全国的な観光地。熱海湾の花火大会とか有名ですよね。
今回は、その熱海の観光分野で実際に行われてる、AIエージェントを活用したデータ分析について視察してきました。
熱海市は人口32,614人の静岡県(神奈川県ではない!)の都市です。
2020年の国際調査に基づくと高齢化率は48.7%、少子化が深刻で2024年の年間出生数は70人程度。出雲で同程度の人口が住む斐川町の出生数が、ここ近年250人前後で推移しているのですが、かなり大変な状況だと思いました。
また、市独自の財源である地方税のうち、観光客や別荘所有者など市民以外からの税収(入湯税・宿泊税・別荘等所有税)が約15%を占めています。
つまり、熱海市の自治体運営は熱海市民のみならず「熱海を訪れる人・所有する人」に支えられている構造になっていて、とても興味深かったです。

【熱海駅前の様子】
AIエージェントとは、AIを活用して、人の代わりに情報収集や分析、判断、作業実行を自律的に行う仕組みです。
従来のAIが「質問に答える」こと中心だったのに対し、AIエージェントは目的に応じて複数の作業を組み合わせ、自ら行動できる点に特徴があります。最近は、カスタマーサポートやリアルタイム議事録作成とタスク抽出など、様々な分野で活用が進められています。
AIエージェントという言葉がわかっていても、私のなかで行政分野における利用実態がいまいち腹落ちしていなかったため、実際に観光分野で実用されている熱海市に視察にお伺いすることにしました。
熱海市は年間約300万人の宿泊客が訪れる一方で、インバウンド宿泊客の比率は全体の約5%未満でした。
【熱海市の政策課題】
特に、平日を中心としたインバウンド宿泊客の拡大が、大きな地域課題となっていたことから、この解決のため、次の3つを政策課題として設定し、対策を講じたということでした。
① データの収集範囲が狭く、体系的に整理・活用がされていない。
② 現状分析、施策の検討・実施、振り返りを行う人員が不足。
③ データ活用に関する専門人材が不在。
【熱海市の取組】
熱海市の取組のポイントは2つです。
①AIコンディションボードの構築
②AIエージェントの導入
この2段構えで実施されています。

出所:https://kanko-dx.go.jp/case-study/2745/
①AIコンディションボードの構築
まずはAIエージェントが分析に必要なデータを収集、ストックするための、AIコンディションボードを構築しました。
コンディションボードというと仰々しいですが、いわゆる観光に関したデータをストックできるデータベースを整備したということです。
具体的には観光マクロ統計、ウェブサイトのアクセス状況、検索データ、Googleマップの口コミなど、複数のデータをデータベースに整理し、関係者が同じ画面で確認できるようにしたとのお話でした。
②AIエージェントの導入による分析とレポート作成
こうして構築されたAIコンディションボードに、どんどんデータがストックされていくわけですが、その蓄積されたデータをAIエージェントが分析し、「熱海観光案内所トレンド通信」や「口コミモニタリング」といったレポートを定期的に作成しています。

【熱海観光案内所トレンド通信】

【口コミモニタリング】
たとえば、口コミなどは傾向と対策を本気で分析するとなると、それなりの手間と労力がかかりますが、AIであれば分析作業を瞬時に行うことができます。さらに、熱海市の場合は、対応の緊急度合い(レベル1〜3)までに口コミを分類し、関係者に共有するという仕組みを構築されていました。
このほか、熱海市ではAIエージェントを活用した観光情報の多言語化など様々な取組が行われています。
取組の詳細はこちらのウェブサイトにまとまっています。
【成果】
熱海市の取組の成果として、従来は職員や関係者が手作業で行なっていたデータ確認・集計・分析の一部を自動化し、特定の分析業務においては手間を最大で90分の1まで削減できたとのことでした。
限られた人員体制のなかで観光データを継続的に活用し、課題の早期発見、施策検討、効果検証をするうえで、AIコンディションボードの構築とAIエージェントの導入は、業務の生産性向上にとても役に立っているとのことでした。
とても興味深かったのは、AIエージェントが作成するレポートを活用して、行政やホテル・旅館をはじめとした、市内の観光に関係する有志で勉強会を定期的に開催しているとのことでした。
しかもこの勉強会の参加者の満足度が、9割を超えているとのことで、AIエージェントが作成したレポートが関係者の目線合わせと、施策構築に実際に活用されていると感じました。
いくら素晴らしいAIを導入したところで、対策を実行するのは人間です。
最近は様々なところでAIが導入されていますが、成否を分けるポイントは
①AIからのフィードバックを関係者で共有できる体制が構築できていること②関係者がPDCAサイクルを実際にまわし、改善につなげていること
この2点に尽きると感じました。
出雲市でも、宿泊税の議論と並行して、観光協会がDMO化され、更なる観光振興のための体制整備が進められています。新たな体制で実施する、具体的な事業を検討する上で、今回の熱海市の視察は意義があるものでした。
この視察で得られた知見を、今後の観光行政の推進のために生かしていきたいと思います。
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