2026/4/11
大阪市は、単に「自分の市のことだけ」を考えて都市行政をしてきたわけではありません。
むしろ歴史的に見れば、その逆です。
戦前から一貫して、大阪市は「大阪都市圏全体」を見据えた母都市としての役割を自覚し、その責任を果たしてきました。
そのことが最もよく表れているのが交通政策です。
大阪の鉄道網は、阪急・阪神・南海・近鉄といった私鉄が郊外へ向けて放射状に発展することで形成されてきました。この構造は都市の成長を支える一方で、人口増加とともに都心部への輸送が逼迫するという課題を抱えることになります。
この課題に対して、大阪市は地下鉄を整備しました。
地下鉄は基本的には大阪市域内の都市交通ですが、その役割は市域内にとどまりません。
例えば谷町線は、大阪市内を縦断するだけでなく、守口市・門真市方面へと延伸されています。これは単なる「市内路線の延長」ではなく、市域を越えた通勤・通学需要を支え、都市圏全体の輸送を分担するためのものです。
つまり大阪市は、
・私鉄による放射状輸送の限界を踏まえ
・市域内で輸送力を増強するだけでなく
・必要に応じて市域外にも機能を伸ばしながら
都市圏全体としての輸送能力を支えてきたのです。
しかもこれは、大阪市の独断ではありません。
国の交通審議会等の答申に基づき、都市圏全体の将来像の中で位置づけられたものです。大阪市は、その広域的な構想を具体のインフラとして実装する主体でした。
ここにあるのは、「市のための交通」ではなく、都市圏全体を成立させるための交通政策です。そして、この構造は交通に限りません。
大阪港は市域にありながら、近畿圏の物流と産業を支える広域インフラとして整備されてきました。
淀川の治水は、市域ではなく流域全体の安全を守る発想です。
御堂筋や都市計画道路は、都心と郊外を結び、都市圏の骨格を形成してきました。
公営住宅や市立病院も、周辺地域からの人口流入を受け止める「都市の受け皿」として機能してきました。
これらに共通するのは、すべてが「大阪市のため」ではなく、大阪都市圏という一つのシステムを維持・発展させるための機能であるという点です。
大阪市は、
・輸送を支え
・経済基盤を整え
・都市の安全を守り
・人を受け入れる
という役割を通じて、大阪都市圏そのものを成立させてきました。
言い換えれば、大阪市は単なる一自治体ではなく、都市圏の中枢として機能してきた母都市です。
ここで、改めて問うべきです。
これまで都市圏全体の機能を担ってきた中核の大都市を、単なる制度論や効率論だけで本当に分割・再編してしまってよいのか。
この認識を曖昧にしたまま制度だけを議論することこそ、
最も本質を見誤ることになるのではないでしょうか。
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カワシマ ヒロトシ/59歳/男
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