2026/3/28

前回、北見の地域資源を棚卸ししました。資源は十分にある。でも、それを戦略的に束ねる仕組みがない。そういう話でした。
今回は、「じゃあ誰がその戦略を描くのか」という、もっと根本的な問いに向き合います。
これまで、地域の将来ビジョンは基本的に行政が作ってきました。「総合計画」「地方創生総合戦略」「産業振興ビジョン」。どれも行政が主体となって策定し、議会の承認を得て、実行に移されるものです。
もちろん、策定過程では民間からの意見聴取も行われます。有識者会議やパブリックコメントなど、市民参加の手続きも踏まれています。
でも、正直に申し上げると、こうした計画の策定プロセスで民間が「主体的にビジョンを描いている」と感じたことは、あまりありません。多くの場合、行政が原案を作り、民間はそれに意見を述べるという形になっています。
これは行政の方々を批判したくて言っているのではありません。行政には行政の論理があります。予算の裏付けがなければ計画は絵に描いた餅になる。だから、実現可能性を考えれば行政が主導するのは当然の流れです。
問題は、「行政が実現可能だと思える範囲」の中でしかビジョンが描けないということです。
私がDXコンサルタントとして全国の自治体と仕事をしてきた中で感じてきたのは、行政には「できること」と「できないこと」の境界線がかなりはっきりしているということです。
法律の枠組み、予算の制約、前例の有無、議会との関係。これらの条件の中で動く行政に、「10年後の北見の産業構造をこう変えよう」という大胆なビジョンを求めるのは、構造的に無理があります。
一方で、民間にはその制約がありません。
「北見の玉ねぎを使った加工品を、アジア市場に売り込もう」「オホーツクの食とカーリングを組み合わせた滞在型観光を作ろう」「北見工大の技術シーズを活かしたスタートアップを育てよう」。こういった大胆な発想は、むしろ民間のほうが得意です。
だから、ビジョンは民間が描く。行政は、そのビジョンの実現を制度面・財政面で支援する。この役割分担こそが、地域経済戦略を動かす鍵だと考えています。
福岡のFDCが機能しているのは、まさにこの構造があるからです。
FDCの事務局長は元経産省出身の民間人。官と民の両方の言語を話せる人材が、戦略の中核にいる。そして、九州経済連合会のトップが会長を務め、民間が主導権を持っている。福岡市はFDCのパートナーとして参画しているけれど、FDCは行政の下請け組織ではない。
フードバレーとかちも、帯広市が事務局を担いつつ、民間企業455社が「応援企業」として主体的に参画しています。行政だけが走っているのではなく、民間が一緒に走っている。
北見にも、この力は確実にあります。
商工会議所がある。JAきたみらいがある。常呂漁協がある。北見工業大学がある。金融機関がある。そして、日々まちの経済を支えている中小企業や個人事業主の方々がいる。
これらの力が、ひとつのテーブルにつく。「北見を10年後にどんなまちにしたいか」を、自分たちの言葉で語り合う。そして、出てきたビジョンに対して、行政が「それならこういう制度で支援できます」と応じる。
「民が描き、官が支える」。 この順番が大事なのです。
行政に「何かしてください」とお願いするのではなく、民間が「自分たちはこうしたい」と先に旗を立てる。その旗に行政が寄り添う。この関係性ができたとき、地域の経済戦略は初めて本気で動き始めます。
次回、第7回では「"北見版シンク&ドゥタンク"をつくるには」をテーマに、具体的な組織設計の話に踏み込みます。
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ニシノ ヒロアキ/43歳/男
ホーム>政党・政治家>西野 ひろあき (ニシノ ヒロアキ)>西野ひろあきブログ:稼ぎ続ける北見へ〜 第6回 民がビジョンを描き、官が支える