2026/7/10
7月7日、横浜地裁川崎支部で、昨年秋の川崎市長選の報道をめぐって私が神奈川新聞社と毎日新聞社をそれぞれ訴えている2つの裁判の、第2回口頭弁論が開かれました。経過と、次回の期日をご報告します。
神奈川新聞社と石橋学記者に対する裁判(240万円の損害賠償請求)では、新聞社側から反論の書面と証拠が提出されました。
新聞社側の言い分は、まとめるとこうです。
そして、私を「レイシスト」と呼ぶ根拠である「真実」として持ち出されたのが、全国部落調査裁判の判決です。部落の地名リストの出版・公開が裁判で違法とされたのだから、宮部をレイシストと呼ぶのは真実に基づく論評だ、という理屈です。
これに対して私は、8月末までに反論の書面を提出します。次回の期日は10月6日(火)午前10時です。
この裁判の訴状や新聞社側の反論など、関連書面はこちらから実物を見ることができます。
同じ日に開かれた毎日新聞に対する裁判では、私が提出した反論の書面が正式に陳述されました。
この裁判で私は、毎日新聞の記事は私の発言を文脈ごとすり替えて、言ってもいないことを言ったかのように書いた、つまり「うその事実を書いた」と主張しています。ところが裁判官は、「発言をしたかどうかが問題なのではなく、論評の仕方の問題ではないか」と、「事実」ではなく「意見・論評」の問題として扱う方向に話を持っていこうとしました。
ここは大事なところなので少し説明します。名誉毀損の裁判では、記事が「事実を書いたもの」か「意見・論評を書いたもの」かで、新聞社側が守られる条件が変わります。「意見・論評」とされれば新聞社側のハードルはぐっと下がり、圧倒的に有利になるのです。
私は法廷で、「同じ言葉でも文脈によって意味は全く変わる。『更地にする』という言葉も、住民を追い出すという意味と、区画整理のために更地にするという意味では全く違う。記事は意味の違うことを事実として書いた」と述べ、あくまで「うその事実を書かれた」という主張を維持しました。
毎日新聞側は8月末までに反論を提出することになりました。次回の期日は9月29日(火)午前11時です。
こちらの裁判の関連書面はこちらで公開しています。
神奈川新聞の反論を読んで感じたのは、「宮部はレイシストで、俺たちは正義なのだから、俺たちが宮部を差別することは許されるのだ」という傲慢さです。
そもそも全国部落調査裁判は、川崎市長選挙とは何の関係もありません(部落は人種=レースではない、という点はひとまず置くとしても、です)。それでも神奈川新聞は、候補者紹介やアンケートから私を外すにあたって、わざわざ「異なる扱いとしております」というおことわりを書きました。これは、自分たちがやっているのは差別的な取り扱いだと自覚しており、それでも自分たちは許されると考えていることの表れでしょう。
しかも、よく考えてみてください。全国部落調査裁判で「宮部が差別をした」とは認定されていないのです。認定されたのは、あくまで差別が起きる「不安」や「おそれ」です。不安やおそれを理由に、目の前の特定の候補者への直球の差別そのものを正当化する。ここに、神奈川新聞の「反差別」というスタンスの本末転倒があります。
一方の毎日新聞裁判では、裁判官が「事実」ではなく「意見・論評」の問題として扱う方向に持ち込もうとしており、どうも毎日新聞を勝たせたいように見えます。
昨今、いわゆる「しばき隊」の暴力的な活動が野放しになっているのは、裁判所の甘い態度に原因があると言わざるを得ません。2022年、安倍元首相の街頭演説への選挙妨害に近いヤジを「表現の自由」だとして、警察による排除を違法とする判決を札幌地裁が出しました。この考え方は最高裁まで争われて確定し、以降、警察は選挙妨害の取り締まりをやりにくくなっています。実際、私が川崎署とやり取りした際にも、署員があの判決のせいで選挙妨害の摘発はためらわれると漏らしていました。現場の警察官自身がそう感じているのです。いわゆるリベラルは、自分たちの主張を押し通すために、公職選挙法や人格権を守るための法律をどこまで蔑ろにできるか、挑戦しているのではないでしょうか。
そして、裁判所が公平に判断していると、どこまで信じられるでしょうか。しばき隊は捕まらない一方で、つばさの党は2024年の衆院東京15区補選の選挙妨害で逮捕・起訴され、NHK党の立花孝志党首も2025年に名誉毀損の疑いで逮捕・起訴されました。全国部落調査裁判での違法認定にしても、「差別されない権利」という、人格権や名誉権について明文化されたどの法律にも書かれていない権利を、裁判所が新しく作り出して下したものです。
こうした状況が政治活動や言論を歪めていると、問題意識を持っている人は多いはずです。しかし、下手に声を上げれば何をされるか分からない、怖くて物が言えない。そういう空気になっています。それでも、選挙の票だけはごまかせません。いずれは、各地の地方議員が連携して、この状況に対抗していくことが必要になると私は考えています。
この裁判は、選挙報道の名を借りた特定候補への攻撃が許されるのか、そして裁判所が法に基づいて公平に判断するのかを問うものです。引き続き経過をご報告します。
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