2026/7/21
昨日参加した研修についてnoteにまとめました。今の私は「住まい支援」の研究に突き動かされています!
20260720研修報告:大嶽貴恵さん×遠藤良子さん~「女性の貧困・孤立」「住まいの権利」「女性支援法を自治体でどう活用していくのか」を考える①~
2026年7月20日、全国フェミニスト議員連盟サマーセミナー2026in多摩に参加し、分科会「女性の貧困・孤立」と「住まいの権利」に参加しました。
私は2026年6月議会で「住まい」をテーマに総括質問を行い、「セーフティネットとしての住まいについて」質問しました。静岡市でも高齢者や障がい者、プレ・シングルマザーの住まい探しにおける課題の認識と解決を図るため、不動産や福祉関係団体、行政等で組織した居住支援協議会が立ち上がったばかりです。
今回は先行事例を学ぶため、居住支援法人(一社)住まいと暮らしの相談室代表理事の大嶽貴恵さんとNPO法人くにたち夢ファームJikkaの遠藤良子さんの分科会を選び、2時間半お話を伺いました。
まずは大嶽さんのお話の聞き取りをこちらにシェアします。
※資料や情報を確認して、こちらに書きましたが、聞き間違いがあるかもしれません。気づかれた方がいましたら教えてください。
大嶽貴恵さんのお話
1 大嶽さんご自身について
大嶽貴恵さんは、2019年に居住支援法人福祉不動産株式会社こたつ生活介護で働いていた。
その後、同じグループ会社である居住支援法人一般社団法人住まいと暮らしの相談室へ異動となる。
一般社団法人住まいと暮らしの相談室は、2021年10月から立川市から委託を受けて居住相談窓口「みんなの住まいサポートたちかわ」を運営し、住宅の確保に困難を抱える人への居住相談や、不動産事業者、福祉関係機関などとの連携に取り組んでいる。
立川市の居住支援は、住宅部門を中心とする国土交通省系の取り組みとして進められてきた。
一方、2025年9月から国立市居住相談窓口業務も開始。こちらは、厚生労働省系の自立支援事業として居住支援が行われている。
2 「気づき・つなぎ・つきあい」という考え方
「気づき・つなぎ・つきあい」という言葉は、認定NPO法人抱樸の奥田知志さんの言葉である。
居住支援では、困りごとに気づき、必要な制度や支援機関につなぐだけではなく、その後も関係を持ち続ける「つきあい」、すなわち伴走が重要になる。
特に大切なのは、行政や専門機関によるフォーマルな支援だけではなく、地域の人、不動産事業者、家主、民間団体などによるインフォーマルな支援。地域の中でどのように連携していくかが問われている。
支援機関だけで完結させるのではなく、地域の中に細かな「支援の目」を増やし、表面化していない困りごとに気づける関係をつくる必要がある。
3 居住支援をめぐる制度の変化
昨年、住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)の改正により、居住支援は国土交通省と厚生労働省の共管となった。
住まいの確保は、住宅政策だけで完結する問題ではない。
生活困窮、生活保護、障害、高齢、女性支援、子育て支援など、福祉や生活支援と密接に関わる課題として位置づけられるようになっている。
その根底には、憲法第13条の個人の尊重や幸福追求の理念がある。
こうした理念や仕組みを、制度の中だけにとどめず、地域の中にも広げていかなければならない。
4 大嶽さんが伝えたいこと
4-1 不動産と福祉の「通訳」が必要
居住支援では、支援を必要とする本人の事情だけではなく、不動産事業者や家主が何を不安に感じているかを理解する必要がある。
不動産事業者や家主は、基本的にはビジネスとして住宅を貸している。
一方、福祉関係者は、本人の生活上の困難や支援の必要性を中心に考える。
両者は、「言語」が異なる。そのため、不動産と福祉の間をつなぐ「通訳」の役割が必要になる。
居住支援とは、単に住宅を紹介して契約につなげることではない。
家主や不動産事業者が、どのような条件であれば安心して貸せるのか
入居後に問題が生じたとき、誰が対応するのか
入居者が安定して暮らし続けるために、どのような支援が必要なのか
本人と地域や支援機関とのつながりを、どのように維持するのか
こうした点まで考え、調整することが居住支援の役割である。
家を貸すことだけではなく、貸した後の伴走支援まで含めて仕組みを整えることで、家主や不動産事業者も安心して貸しやすくなる。
4-2 多職種・多機関連携が鍵
居住支援には、不動産、住宅部門、生活保護、生活困窮者支援、障害福祉、高齢者福祉、女性相談、子ども・子育て支援など、複数の分野が関係する。
立川市には居住支援協議会があるため、不動産関係者と福祉関係者が同じ場で話し合うことができる。
異なる「言語」を持つ人たちが一堂に会し、それぞれが持つ情報、制度、地域資源を共有できることに意味がある。
大嶽さんからは、行政が持っている福祉サービスを、不動産事業者が知らないことがあるという話があった。
その一例として紹介されたのが、国立市の「高齢者ふれあい牛乳」である。
国立市では、70歳以上の一人暮らしの高齢者を対象に、地域の協力店を通じて、牛乳などの乳製品を週3回無料で配達している。乳製品の配達を通じて安否確認を行う、見守りを兼ねたサービスである。
このような見守りサービスがあることを不動産事業者や家主が知れば、高齢者に住宅を貸す際の不安を軽減できる可能性がある。
一方で、行政や福祉関係者も、不動産事業者や家主がどのような点を懸念しているのかを十分に理解していない場合がある。
居住支援協議会には、不動産と福祉の情報の断絶を埋め、それぞれが持っている制度や地域資源を共有する役割がある。
制度だけでは見つけられない地域のつながりを支援に生かし、「支援の目」を細かくしていくことが重要である。
5 住まいを借りるときの「基本のキ」
民間賃貸住宅を借りる際には、大きく分けて二つの審査がある。
5-1 保証会社の審査
一つ目は、家賃保証会社による審査である。
保証会社の審査では、家賃を継続して支払える収入があるかどうかが確認される。収入がまったくない状態では、保証会社の審査を通過することが難しい。
そのため、住まい探しと生活保護申請を別々に進めるのではなく、同時に進められるよう支援体制を整える必要がある。
重層的支援体制整備事業なども活用し、住宅支援と福祉支援を一体的に進めることが重要である。
5-2 家主の審査
二つ目は、家主による入居審査である。
保証会社の審査を通過しても、最終的には家主が入居を認めるかどうかを判断する。
5-3 前提
賃貸住宅を借りる際には、主に次のような条件が求められる。
①収入があること
給与、生活保護、年金など
審査の目安は家賃の3倍以上の収入もしくは預貯金があること
生活保護受給の場合はなぜ生活保護受給しているのか
②緊急連絡人がいること
親族、知人、友人など。立川市では、市が緊急連絡先となる仕組みがあるとの説明があった。
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの大西連さんが緊急連絡人になるとしても、認めない不動産事業者があるという話も紹介された。
③携帯電話を持っていること
6 立川市における居住相談の流れ
6-1 要配慮者へのヒアリング、アセスメント方法
アセスメントで確認すること(不動産事業者が必要とする情報を聞き取る)
居住相談では、本人が希望する家賃や間取りなどを聞くだけではない。
不動産事業者や家主が入居を判断するために必要とする情報を、細かく丁寧に聞き取る。
立川市内にも、生活保護利用者の入居を断ることが多い不動産事業者がある。
そのため、居住支援協議会では、単に「生活保護を利用している人です」と伝えるのではなく、本人の生活状況や支援体制について具体的に整理して伝える。
聞き取る内容には、次のようなものがある。
収入があること(生活保護受給者であれば受給の理由)
障害や病気の状況
精神障害の有無や症状
ペットを飼っているか
これまでどのような仕事をしてきたか
現在どのような支援を受けているか
親族との関係
緊急時に連絡できる人がいるか(高齢者の場合、親族がより良い)
携帯電話があるjこと
社会や地域とつながっているか
特に「本人が社会とつながっているか」は、不動産事業者や家主の安心につながる重要な情報である。
本人に何かあった場合に、相談できる支援者や関係機関がいることは、本人の安心だけではなく、貸す側の安心にもなる。
6-2 過去のトラブルと再発防止策を確認する
過去に家賃滞納や近隣トラブルがあった場合、それを隠すのではなく、事情を確認したうえで、今回は同じことが起きないようにどのような支援や対策を行うかを整理する。
前回の退去理由が家賃滞納だった場合には、本人との面談で次のような点を確認する。
なぜ家賃を滞納したのか
現在の収入は安定しているか
家賃を確実に支払う仕組みをつくれるか
金銭管理の支援が必要か
支援者がどのように関わるか
近隣トラブルがあった場合にも、次のような点を確認する。
どのようなトラブルだったのか
原因は何だったのか
今回はどのように再発を防ぐのか
問題が起きた場合に誰が対応するのか
不利な情報を伏せるのではなく、入居後も支援が継続することや、再発防止策があることを具体的に示すことで、家主や不動産事業者の不安を軽減していく。
過去に問題があったことだけで排除するのではなく、「今回はどうすれば安定して暮らせるか」を本人と一緒に考える姿勢が大切である。
7 庁内(福祉部局(女性相談支援員、住宅課等)、社会福祉協議会、不動産協力店との連携
面談時に、支援機関を聞き取り、本人の承諾のうえ、関係機関と情報共有を行う。
8 不動産協力店との連携(物件情報照会依頼)
予約時に相談者の状況をヒアリングし、面談前に物件情報を調べ、相談者の安心につなげる
立川市では、居住支援に協力する不動産店を登録する「不動産協力店」の仕組みがあり、24店舗が登録されている。
立川市内には大きな不動産関係団体が二つあり、立川市居住支援協議会の会長は、二つの団体が順番に担っているとの説明があった。
不動産業界が居住支援協議会の運営に主体的に関わることで、行政や福祉側だけで進めるのではなく、実際に住宅を貸す側の視点を含めた仕組みとなっている。
また、立川市の居住支援は、住宅マスタープランに沿って進められている。
9 相談者が抱える課題
立川市の居住相談件数は168件との説明があった。
相談記録では、住宅を借りにくくしている主な理由を「第一属性」として整理している。しかし、実際には、一つの理由だけで住宅を借りられなくなっている人は少ない。
一人の相談者が複数の困難を抱えていることが多いため、属性ごとに分かれた縦割りの支援では対応しきれない。
住宅、生活保護、女性相談、子ども、障害、高齢など、多くの部署や機関が連携する必要がある。
10 プレシングルマザー支援、女性相談支援員との連携の難しさ
離婚を考えていても、手元にお金がない女性は、住まいの確保が非常に難しい。
このような離婚前の女性、いわゆるプレシングルマザーを、どの部署が受け止め、どのように住まいにつなぐのかが大きな課題となっている。
居住支援の現場と女性相談支援員との連携が難しいという指摘があった。
住まいの問題を抱える女性の中には、DV、離婚、経済的困窮、子どもの問題など、女性相談支援員が関わるべき事情を抱えている人が多い。
しかし、居住支援側から女性相談につなごうとしても、十分な連携ができない場合がある。
居住支援と女性支援を別々の制度として扱うのではなく、本人の困りごとを中心に、住宅部門と女性相談部門が連携する必要がある。
特に、プレシングルマザーの住まいの確保は、女性支援と居住支援の両方にまたがる課題である。
12 大嶽さんの話から見える重要な視点
①住まいを借りるまでで終わらせない
住宅を紹介し、入居契約を結ぶことだけが居住支援ではない。
本人がその住宅で安定して暮らし続けられるよう、入居後も伴走する必要がある。
②家主や不動産事業者の不安にも向き合う
支援を必要とする本人の事情だけでなく、家主や不動産事業者が何を不安に感じるのかを理解する必要がある。
貸す側の不安を具体的に把握し、支援体制や見守り、緊急時の対応を示すことが、入居の可能性を広げる。
③不動産と福祉の通訳役が必要
不動産と福祉では、使う言葉や判断基準が異なる。
両者の考え方を理解し、必要な情報を適切に整理して伝える人や組織が必要である。
④本人が社会とつながっていることを伝える
困ったときに相談できる人や支援機関があることは、本人の安心だけでなく、貸す側の安心にもつながる。
居住支援では、物件の条件だけでなく、本人を支える関係性も重要な資源となる。
⑤過去の問題を責めるのではなく、再発防止を考える
家賃滞納や近隣トラブルがあった場合も、その事実だけで排除するのではない。
原因を確認し、今回はどうすれば繰り返さずに済むかを本人と一緒に考える。
⑥制度間の隙間にいる人を支える
離婚前の女性、外国人シングルマザー、ヤングケアラーのいる世帯など、既存制度の一つだけでは支えられない人がいる。
こうした人を、多機関の連携によって支える必要がある。
⑦インフォーマルな支援も地域資源として位置づける
行政制度だけでなく、不動産事業者、家主、地域の協力店、見守り活動、地域住民なども、居住を支える資源となる。
国立市の「高齢者ふれあい牛乳」のような地域の見守りサービスを、不動産関係者と共有することで、住宅を貸す側の安心にもつなげられる。
13 静岡市で確認したいこと
大嶽さんのお話を踏まえると、静岡市では次の点を確認、調査する必要がある。
居住支援協議会について
居住支援協議会は、実際にどのような役割を果たしているか
不動産と福祉が同じ場で協議する機会があるか
住宅部門、生活保護、女性相談、障害、高齢、子ども部門が参加しているか
個別ケースを通じた具体的な連携が行われているか
協議会が情報交換だけの場になっていないか
不動産事業者との連携について
居住支援に協力する不動産店の登録制度があるか
協力店の数や地域的な偏りはどうか
居住相談から協力店につなぐ具体的な流れがあるか
不動産事業者が必要とする情報を誰が整理しているか
家主や不動産事業者の不安を軽減する仕組みがあるか
入居の条件について
緊急連絡人を確保できない人への支援があるか
行政や居住支援法人が緊急連絡先となる仕組みはあるか
携帯電話を持てない人への支援があるか
保証会社の審査に通らない人に対する支援策があるか
生活保護申請と住まい探しを並行して進められるか
入居後の支援について
入居後の見守りや伴走支援を誰が担っているか
家賃滞納を防ぐための金銭管理支援があるか
近隣トラブルが起きた場合の対応体制があるか
家主や不動産事業者が相談できる窓口があるか
行政が持つ見守りサービスや福祉制度を、不動産事業者と共有しているか
女性の居住支援について
居住支援と女性相談支援員が連携できているか
単身女性やプレシングルマザーを居住支援につなぐ仕組みがあるか
シェルターを希望しない女性も支援対象となっているか
身体的暴力以外のDVや経済的支配を抱える女性に対応できているか
女性が現在の生活圏とのつながりを失わずに転居できる選択肢があるか
複合課題を抱える世帯について
外国人、ひとり親、ヤングケアラーなど、複合的な課題を抱える世帯をどのように支援しているか
世帯全体を捉えたケース会議が行われているか
住宅問題を、家賃滞納など表面上の問題だけで処理していないか
本人や子どもの生活再建まで見通した支援になっているか
まとめ
大嶽さんのお話の中心は、居住支援を単なる「住宅の紹介」としてではなく、福祉、不動産、行政、地域をつなぎ、本人が住み続けられる環境を整える仕事として捉えることにあった。
住宅を借りにくい人は、単に収入が少ないだけではない。
障害、病気、家族関係、離婚、DV、家賃滞納、緊急連絡人の不在、国籍、社会的孤立など、複数の課題を抱えている場合が多い。
そのため、本人だけに問題解決を求めるのではなく、貸す側の不安を軽減し、支援機関同士の情報の断絶を埋め、入居後も地域で支え続ける仕組みが必要である。
また、行政が持っている福祉制度や国立市の「高齢者ふれあい牛乳」のような地域の見守りサービスなどのインフォーマルサービスを確認し、不動産事業者や家主と共有することも重要である。
「気づき・つなぎ・つきあい」という言葉は、住まいを確保することをゴールとせず、その人が地域で生活を続けられるまで伴走する居住支援の本質を表している。
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