2026/7/1
東大阪市には、結婚50年・60年・70年を迎えた夫婦を祝う事業があります。
一見すると、長年連れ添った夫婦を祝福する温かな事業に見えます。
しかし私は、これを自治体が実施することには、少し立ち止まって考えるべき点があると感じました。
結婚記念のお祝いって、本来は、個人的なことではないでしょうか?
生涯独身の人や離別・死別した人もいますよね?
そのような人はこの事業の対象にはなりません。
自治体は本来、市民を公平に扱うべきではないでしょうか。
「結婚生活が長いかどうか」という個人的な事情を根拠に、自治体が市民への扱いを区別することには、慎重な説明が必要ではないでしょうか。
長年連れ添われたご夫婦を個人が祝福することは否定しません。
問題にしたいのは、それを自治体が実施することの妥当性です。
東大阪市では、毎年10月に、結婚70年のプラチナ婚、60年のダイヤモンド婚、50年の金婚を迎える夫婦を対象に、祝賀行事を開催しています。
「市政だより」などで募集が行われています。


報道では、こうした事業はしばしば「長年連れ添った夫婦を祝う心温まる話」として紹介されます。
しかし、公的事業として見たときには、祝福される人とされない人を行政が線引きしているという別の側面もあります。
詳細は下記「参考資料」をご覧ください。
結婚記念日を祝うこと自体は、もちろん素晴らしいことです。
しかし、それは基本的には個人や家族、地域の中で行う私的なお祝いではないでしょうか。
自治体が行うなら、なぜその対象が「長く結婚している夫婦」なのか、行政としての合理的な説明が必要だと思います。
生涯独身の人、離別した人、配偶者と死別した人など、人生の形はさまざまです。
そうした人たちは、この事業の対象にはなりません。
行政が、祝う人と祝わない人を、結婚期間で分けてよいのかという疑問があります。
高齢者福祉というなら、孤立防止、生活支援、健康づくりなど、婚姻の有無に関係なく必要な支援があるはずです。
結婚期間は、福祉ニーズを測る基準ではありません。
市長からの回答の要旨は次のとおりです。詳細は下記「参考資料」をご覧ください。
1. 本事業は、金婚夫婦等を祝福すること、および長寿と福祉の増進を図ることを目的とする。
2. 本事業は趣旨に照らし適切であると考える。
3. 経費は必要性等を総合的に精査しながら予算を執行している。
4. 必要に応じて見直しについて検討する。
しかし、この回答では、なぜ「結婚期間」を高齢者福祉の基準とするのかについて、十分な説明は示されていないように感じます。
要望書を提出した後で思ったのですが、本事業は、結果として、
「結婚し、その関係を長く続けること」が望ましい人生である
かのようなメッセージ(価値観)を、行政が市民に発しているように見える点も気になりました。
長野県中野市では既に合同金婚式を廃止していました。

兵庫県小野市も

長年連れ添った夫婦を祝うこと自体は、温かいことだと思います。
しかし、自治体が実施する事業である以上、そこには公平性や説明責任が求められるはずです。
結婚している人、していない人、配偶者と死別した人。
高齢期の生き方は一つではありません。
みなさんは、こうした結婚記念事業を自治体が行うことについて、どう考えるでしょうか。
以下は、私が実際に提出した要望書の全文です。硬い表現になっていますが、行政に対して正式に問題点を伝えるため、この形にしています。
//*** 以下、要望書全文 ***//
東大阪市が実施している高齢者福祉事業「プラチナ婚・ダイヤモンド婚・金婚夫婦のつどい」について、現代の社会状況および市が掲げる多様性尊重の理念との整合性を踏まえ、同事業の廃止または抜本的見直しを要望いたします。
本事業は、長年連れ添われた夫婦を祝福する目的で実施されてきたものと承知しております。しかしながら、婚姻や家族の形態が多様化し、また市が多様性推進を掲げる現代において、以下の点から本事業は公的事業としての合理性・公平性・法的整合性を欠いていると考えます。
1.事業の選定基準が高齢者福祉の目的と整合していない
本事業は婚姻期間という個人の私的事情を基準として対象者を選定しています。しかし、婚姻期間は福祉ニーズや生活困難度とは無関係であり、高齢者福祉・敬老事業の対象基準として合理性を欠きます。
高齢者福祉は、本来、生活支援、孤立防止、健康維持など、客観的な福祉課題に基づいて施策を構築すべきであり、婚姻期間を基準とすることは行政目的との整合性を欠くものです。文化行事だとしても公金を使う以上、公平性は免れません。
2.多様な生き方を排除する制度効果が生じている
市民の中には、生涯独身を選択した方、離別を経験された方、事実婚・同性パートナーシップなど法律婚に依らない関係を築く方、また配偶者と死別し一人で高齢期を生きる方など、多様な背景を持つ高齢者が多数存在します。
本事業は、「法律婚をしていること」かつ「長期間継続していること」を祝福基準としており、制度の効果として多様な生き方を排除する結果を生んでいます。
行政は意図の有無に関わらず、制度が生み出す排除の効果について説明責任を負うべきであり、現行制度はその観点から問題があります。
3.市の多様性施策・他制度との整合性の欠如
東大阪市の市政だより(令和7年7月号)では、本事業の対象を「昭和30年に結婚した夫婦」「昭和40年に結婚した夫婦」など、結婚年数を基準とする夫婦と明記しています。行政文書における結婚は戸籍上の法律婚を指し、事実婚・同性パートナーシップは制度上対象外となることが明確です。したがって、本事業は制度設計上、法律婚以外の家族形態を排除しています。
他方で、東大阪市は独自のパートナーシップ制度こそ有していないものの、「大阪府パートナーシップ宣誓証明制度」を市営住宅の応募資格として正式に認めています。これは、市が制度運用の中で法律婚以外のパートナー関係を行政サービスの対象として扱っていることを意味します。
上記のとおり、市はパートナーシップ制度を行政サービスに適用しつつ、本事業では法律婚のみを祝福対象としています。市の多様性施策と本事業の制度設計が矛盾するという、整合性欠如が生じています。
行政内部で矛盾する制度が併存することは、行政の一貫性・公平性・説明責任の観点から問題があります。
4.公金支出としての妥当性に欠ける
限られた市財政の中で、特定の私的事情(婚姻期間)に基づきイベントや記念品を提供することは、公金の使途として妥当性を欠きます。
また、婚姻期間は個人の努力だけでなく偶然性にも左右されるため、公金支出の基準として客観性・公平性に欠けると言わざるを得ません。
公金は、婚姻の有無に関わらずすべての高齢者が等しく恩恵を受けられる生活支援や孤立防止施策へ重点配分すべきです。
5.原則に関する問題
(1)公平の原則
市は住民に対して公平に行政を行わねばなりません。
しかし、本事業は、婚姻歴の有無・事情によって高齢者間に明確な差を設けており、行政の公平性原則と整合しません。
(2)合理性の原則
行政が特定の集団を優遇する場合、その基準には、行政目的との合理的関連性や客観的で説明可能な基準が必要です。
婚姻期間は福祉ニーズと無関係であり、行政目的(高齢者福祉)との合理的関連性が認められません。
(3)結果としての差別への配慮義務
行政は、制度が生み出す不利益について意図の有無に関わらず責任を負います。
本事業は、独身者・離別者・死別者・事実婚・同性パートナーを制度的に排除する効果を持ち、実質的な間接差別、あるいは法の下の平等に反する制度的排除にあたると考えます。
6.要望事項
以上の点を踏まえ、以下のとおり要望いたします。
(1)「プラチナ婚・ダイヤモンド婚・金婚夫婦のつどい」事業を廃止すること。
(2)廃止しない場合は、婚姻の有無に依存しない、すべての高齢者を対象とする公平な事業へ抜本的に見直すこと。
(3)本要望に対し、文書にて回答をいただくこと。
//*** 以上、要望書全文 ***//
なお、この要望書でいう「差別」や「法の下の平等」という表現は、直ちに違法と断定する趣旨ではなく、公的制度としての公平性を問うために用いています。

以上
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>前田 弘一 (マエダ ヒロカズ)>自治体による結婚記念祝賀への疑問|東大阪市「金婚夫婦のつどい」