2026/7/16
こんにちは。関市議会議員の北村隆幸です。 専門は、中間支援センターにて、市民活動や地域づくり、自治会等のコミュニティ支援をしています。
いきなりですが、ひとつ質問です。
「孤独」って、健康にどれくらい悪いと思いますか?
……実はこれ、私も知って本当にびっくりしたのですが、 孤独は「1日にタバコを15本吸う」のと同じくらい、健康に悪いそうです。
今回は、令和6年9月の関市議会で私が取り上げた「孤独・孤立対策」について、できるだけわかりやすくお話しします。関市にお住まいの方はもちろん、他のまちで同じ課題に向き合っている方にも、ヒントになればうれしいです。
先に、いちばん伝えたいことから書きます。
孤独・孤立は、本人の心の弱さの問題ではありません。まちの「つながりの仕組み」で、防いだり、和らげたりできる社会課題です。
そして私は、その切り札が**「社会的処方(しゃかいてきしょほう)」**という考え方だと思っています。
ひとことで言うと、 **「薬で人を健康にするのではなく、人とまちとのつながりで人が元気になる仕組み」**です。
なぜそう考えるのか。関市の現状と、具体的な提案を順番に見ていきます。
孤独・孤立は、いまや個人の問題ではなく国策のテーマです。
令和5年には**「孤独・孤立対策推進法」が施行され、「孤独・孤立担当大臣」**まで置かれました。国がここまで本気になるのには、はっきりした理由があります。孤独・孤立が健康に及ぼすリスクが、すでに科学的に証明されているからです。
冒頭の「タバコ15本」は、東京医科歯科大学・相田教授の論文で示されたものです。それだけではありません。孤独な状態が続くと、
と報告されています。心の問題にとどまらず、体そのものをむしばんでいくのですね。
孤独・孤立対策の先進国イギリスでは、2006年ごろから国をあげて取り組み、対策によって外来受診や入院が減るという成果まで出ています。つまり、孤独対策は「やさしさ」の話であると同時に、医療費や介護費を抑える、極めて現実的な投資でもあるのです。
「うちのまちは大丈夫」——そう思いたくなりますが、データはそうは言っていませんでした。
岐阜県が令和4年に行った実態調査では、「何かしら孤独を感じている人」は全体の47.3%。ほぼ2人に1人です。「しばしば・常に孤独を感じる」人も7.7%いました。
意外だったのが年代です。孤独感が高いのは高齢者だけではなく、男性は40代・50代、女性は20代・30代でも高い。働き盛りや若い世代にも、孤独は広がっているのです。
関市自身のデータも見てみました。関市には2016年から続く**「地域診断」**という素晴らしい調査があります。そこからわかったのは、
ということでした。関市でも、孤独・孤立のリスクは確実に高まっています。
ちなみに余談ですが、この地域診断、関市で「幸福感が高い人」が一番多い地域はどこだと思いますか? 武芸川地区なんです。こういう地域ごとの姿が見える調査はとても貴重。ぜひ市には、このデータをもっと公開してほしいと思っています。
ここからが関市の強みの話です。
関市には孤独・孤立「専用」の事業こそありませんが、その役割を担う土台がすでにあります。それが**「重層的支援体制整備事業(じゅうそう)」です。名前は難しいですが、要は「いろんな困りごとを、縦割りにせず、みんなで連携して支える仕組み」**です。
国(内閣府と厚生労働省)も令和6年6月に「孤独・孤立対策は重層的支援と積極的に連携せよ」と通知を出しました。まさに関市は、この重層をいち早くスタートさせた県下でもトップランナーなんです。
重層は、5つの事業でできています。
制度としては本当によくできています。ただ、私は現場を見てきて、3つの「もう一歩」の課題があると感じています。
「あれ、お隣のおばあちゃん、最近ちょっと様子が変じゃない?」 「いつも散歩してた人を、最近見かけないな」
——この普段の暮らしの中での小さな気づきこそが、早期発見の入り口です。
議会では、みなさんにイメージ図をお配りしました。
介護保険、医療、生活保護……四角い「制度」という積み木が、瓶の中に積み重なっている。でも、四角い積み木同士のあいだには、どうしてもすきまができます。いまの住民の困りごとは、この制度と制度のすきまで生まれているのです。
では、そのすきまを埋めるのは何か。 積み木のような固い制度ではなく、すきまに流れ込む「液体」のような、柔軟な施策。それが社会的処方であり、その正体は結局、**柔らかく間をつなぐ「人」**なのだと思います。
イギリスでは、この役割を**「リンクワーカー」**という仕組みにしています。病院などに常駐し、医療・福祉と地域コミュニティをつなぐ専門職です。日本でも、地域にいる看護師「コミュニティナース」が広がっていて、お隣の犬山市では養成講座も開かれています。可児市ではアーラ(文化施設)でリンクワーカー養成講座を開き、芸術で孤独・孤立を防ぐ取り組みまで始まっています。
そこで私は、関市に向けて具体的にこう提案しました。
1. 専門職をリンクワーカー・コミュニティナースに 地域包括支援センターの保健師・看護師さんに、その視点を持ってもらう。市からは「月1回の部会で意識づけをし、研修も検討する」との答弁がありました。
2. 市民の中にも“リンクワーカー”を 専門職だけでなく、**「ちょっとおせっかいな人」**が地域には必要です。「あの人、これが得意だから頼んでみたら?」と、市民同士を自然につなぐ人。そういう人を増やすことが、実は一番の力になります。
3. 市民活動センターを社会的処方の担い手に たとえば、花を植える活動をしている団体に、花好きな独居の高齢者が参加したら、それはもう立派な**「園芸福祉」**です。市民活動は、本人たちにケアの意識がなくても、出番と役割をデザインすれば立派なケアになる。その“変換”をして支援につなぐ役割を、市民活動センターに担ってほしいと考えています。
4. 「暮らしの保健室」「まちの保健室」のような場を 三重県名張市では、小学校区ごとに「まちの保健室」があり、保健師さんが常駐して、ラジオ体操やサロン、みんなの食堂を地域と一緒にやっています。相談を「待つ」のではなく、小さなイベントで自然に人と出会い、早期発見につなげる。関市でいう「ふれあいセンター」や「地域委員会」と組み合わせれば、大きな可能性があると思っています。
関市の重層的支援体制は、制度としては県内トップクラス。本当によくできています。
でも、制度の「すきま」を、人のつながりで埋める「社会的処方」を導入してこそ、この仕組みは完成する——私はそう確信しています。
孤独・孤立は、誰の身にも起こりうることです。特別な誰かの問題ではなく、私やあなたの隣で、静かに進んでいるかもしれない。だからこそ、大がかりな制度をいきなり作るのではなく、まずはシンポジウムを開く、名張市に視察に行く——そんな小さな一歩から始めたいのです。
まちの誰かの「ちょっと気になるな」という気づきが、誰かの命や暮らしを守る。 そんな関市を、これからも提案し続けていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事は、令和6年第3回関市議会定例会(令和6年9月)での一般質問「孤独・孤立対策推進について」をもとに、北村隆幸が書き起こしたものです。
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