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稲森 洋樹 ブログ

【大阪府議会】身を切る改革は、”民意”を切る改革だったのではないか(考察)

2026/7/8

大阪府議会の定数削減と「ゲリマンダー的」制度改変

「議員定数削減」と聞くと、多くの方は「議員を減らすなら身を切る改革だし、良いことだ」と受け止めるかもしれません。しかし、選挙制度の中身を紐解けば、単純にそうは言えない実態が見えてきます。

議員を減らしたこと自体が問題ではありません。どの選挙区を減らし、その結果、誰に有利な制度になったのか。ここを見なければ、定数削減の本質は見えてきません。

私の結論を先に言えば、この間大阪府議会で行われてきた定数削減は、単なる「身を切る改革」ではありません。維新が過半数を持つ議会において、1人区化・無投票化を進め、結果として多数派に有利な議席構造を強めた、極めてゲリマンダー的な制度改変ではないかと考えています。

ゲリマンダーの本質とは何か

ゲリマンダーとは、本来、「選挙区の線引きを権力側に有利になるように歪めること」を指します。大阪府議会の定数削減は、古典的な「区割り線操作型」のゲリマンダーそのものではありません。

しかし、その本質は「ルールを握っている側が、自分たちに有利な選挙制度を作ること」です。選挙区の境界線を動かさなくても、選挙区ごとの定数を変えることで、同じ効果を生み出すことができます。

特に、「2人区を1人区に変えること」は重大です。 2人区であれば、2位の候補も当選できるため、複数の政党や民意が議会に届く余地があります。しかし1人区になれば、当選するのは1位だけ。2位以下の票は、どれだけ多くてもすべて「死票」になります。つまり、2人区から1人区への変更は、単なる削減ではなく、「民意を反映する制度」から「1位が総取りする制度」への変更なのです。

大阪府議会で起きた「数字」の実態

2019年から2023年にかけて、大阪府議会では総定数が88から79へと、9議席削減されました。その裏側で起きた変化が以下です。

1人区: 31 ➔ 36へ増加

無投票区: 8 ➔ 11へ増加

大阪維新の会の議席占有率: 57.95% ➔ 69.62%へ上昇

これだけを見ても、定数は減った一方で、1人区と無投票区が増え、維新の議席シェアが大きく上がったことがわかります。

さらに、定数が削減された選挙区と、削減されなかった選挙区を比較すると、その変化は突出しています。

もちろん、当時の維新の勢いや地域事情など、様々な要因はあります。しかし、この数字を前にして「定数削減は多数派に有利に働いていない」と言い切る方が無理があります。定数削減が多数派に有利な制度効果を生んだ可能性は、十分に検証されるべきです。

1人区化と無投票区がもたらす弊害

仕組みを単純化して考えてみます。

ある選挙区で、仮に1位維新、2位自民、3位共産という得票順位だったとします。ここが2人区であれば維新と自民が当選し、複数の民意が議会に届きます。しかし、定数が1人になれば当選するのは維新だけ。2位の自民も3位の共産も落選です。

1人区は、その地域で1位を取りやすい第1党に圧倒的に有利な仕組みです。大阪府議会の定数削減は、この1人区を増やす方向に働きました。

さらに深刻なのが、選挙そのものが消える「無投票区」の増加です。

1人区が増え、強い第1党が存在する状況では、中小政党や無所属候補は「どうせ勝てない」と立候補をためらいやすくなります。その結果、無投票が増えれば、有権者は選ぶ機会そのものを失い、現職や強い政党がそのまま議席を得やすくなります。これは効率化ではなく、有権者の選択肢を狭め、民主主義の競争を弱める問題です。

八尾市議会の定数削減との決定的な違い

ここで、私自身の立場も明確にしておきます。

私はかつて八尾市議会において、維新議員団の幹事長として定数削減の旗振り役を担いました。だからこそ、定数削減そのものを一律に否定しているわけではありません。人口減少社会において、議会の規模を見直す議論自体は当然あり得ます。

ただし、八尾市議会と大阪府議会では、制度の構造がまったく違います。

八尾市議会は、全市一区の「大選挙区」です。市全体から複数名が当選する構造そのものは変わらないため、定数を減らして選抜が厳格化しても、多様な民意が議会に届く余地は残ります。

一方、大阪府議会は「複数選挙区制」です。ここで定数を削ると、2人区が1人区になり、1位以外の票が切り捨てられ、無投票化が進みます。

同じ「定数削減」という言葉で一括りにするのは、制度論としてあまりにも雑です。もし公正に定数を見直すのであれば、複数の小さな選挙区をまとめ、複数人を選出する中選挙区的な設計など、別の選択肢もあったはずです。

本当に切られたのは何だったのか

「身を切る改革」という言葉は聞こえがいいですが、本当に切られたのは議員の身分だったのでしょうか。それとも、有権者の選択肢や、議会の多様性だったのでしょうか。

多数派が自分たちに有利な制度を作り、それを「改革」と呼ぶ。これを許してしまえば、選挙制度は民意を測る道具ではなく、権力を維持するための道具になってしまいます。

大阪府議会の定数削減は、狭義のゲリマンダーそのものではありません。しかし、定数配分を変え、1人区や無投票区を増やし、多数派に有利な議席構造を作ったという意味では、極めてゲリマンダー的な制度改変だと考えます。

問題は、議員を減らしたこと自体ではありません。「どの議席が減り、誰の票が届きにくくなり、誰に有利になったのか」。大阪府民の皆さんには、ぜひこの視点で、定数削減の本質を見ていただきたいと思います。

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著者

稲森 洋樹

稲森 洋樹

選挙 八尾市議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,462 票
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肩書 八尾市議会議員
党派・会派 無所属
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