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地方自治体の生成AI導入は今どこまで進んでいるのか――Copilotとそれ以外で見る全国トレンド

2026/4/1

地方自治体の生成AI導入は今どこまで進んでいるのか――Copilotとそれ以外で見る全国トレンド

生成AIの話題が広がるなかで、地方自治体でも導入の動きが着実に進んでいます。ただ、ニュースを追っていても「導入しました」という見出しは目にするものの、その中身まではなかなか見えてきません。特にCopilotについては、導入のニュースはあっても、どこまで本格的に使っているのか、他の生成AIとどう違うのかが分かりにくいまま語られがちです。私は名古屋市会議員として、自治体における生成AI導入の実態は、もう少し丁寧に整理して語られるべきだと感じています。いま起きているのは、単なる新しい便利ツールの採用ではなく、行政実務そのもののあり方が少しずつ変わり始めている動きだからです。

まず全体の傾向として見えてくるのは、都道府県や指定都市では生成AIの導入がかなり進んでいる一方、一般の市区町村ではまだ差が大きいということです。総務省の令和6年12月末速報値では、生成AI導入済みの割合は都道府県で83.0%、指定都市で85.0%、市区町村で28.8%でした。逆に言えば、市区町村では未導入が多いのですが、これは必ずしも無関心という意味ではありません。検討中や実証中の自治体も多く、全国的には「大きい自治体が先行し、小さい自治体が追いかける」という構図がかなりはっきりしています。

そのうえで、自治体の生成AI導入は、おおむね五つほどの型に分けて考えると見通しがよくなります。

第1に、Copilotを本格導入して、庁内業務の主力に据えている自治体です。これはMicrosoft 365の環境を前提に、Word、Excel、Outlook、PowerPoint、Teamsなど、日常の業務ソフトの中で生成AIを使うやり方です。Microsoft 365 Copilotは、仕事用アプリの文脈の中で、ユーザーがアクセス権を持つメールや文書などを踏まえて支援する仕組みとして案内されています。神戸市のように全職員向けの本格利用に進んだ自治体もあり、大規模自治体では、既存の業務環境にそのまま埋め込めることが大きな強みになっています。

第2に、Copilot Chatのような比較的導入しやすい形から全庁利用を進めている自治体です。これは、いきなり高コストの本格導入に踏み切るのではなく、まずは標準機能や一部機能で使い方を広げ、研修やガイドライン整備を進めながら、段階的に活用を深めていく型です。実務の世界では、最初から理想形を目指すより、まず安全に回る形で始めるほうが現実的です。自治体の生成AI導入でも、その現実感がよく表れていると思います。

第3の事例として注目したいのが、Copilotだけに頼らず、独自環境や複数サービスを使い分けている自治体です。たとえば大阪市は、Azure OpenAI Service等を用いた市独自環境で全職員向け利用を始めていますし、福島県の仕様書ではMicrosoft 365 Copilotに加えて、ChatGPTまたはGeminiの利用要件も求めています。ここから見えてくるのは、「どのAIが最強か」という単純な比較ではなく、「どの業務にどのAIが向いているのか」を行政側も具体的に考え始めているということです。

第4の傾向として見えてくるのが、LGWAN対応の自治体特化型サービスを重視する流れです。LGWANとは、地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワークのことで、自治体どうしや国とのやり取りを、より安全な閉域的な環境で行うための基盤です。自治体にとっては、単に便利かどうかだけでなく、既存のネットワークや情報管理のルールに合うかどうかが非常に重要です。そのため、インターネット前提のサービスだけでなく、LGWAN環境でも使える自治体専用の生成AIサービスや、複数自治体による共同利用が注目されています。埼玉県が2026年4月から県内15団体で共同利用を始めた「自治体AI zevo」は、その象徴的な事例の一つです。

第5の潮流として重要なのが、教育分野の先行です。東京都では、2025年5月から全都立学校256校で、児童生徒と教職員が利用する生成AIサービス「都立AI」の提供が始まりました。教育分野は、本庁の一般行政部門とは別のスピードでAI活用が進んでいます。授業、校務、教職員研修という複数の入口があることに加え、子どもたちがAIとともに生きる社会を前提に考えれば、この動きは一時的なものではなく、むしろ広がっていく可能性が高いと感じます。

さらに見逃せないのが、生成AIの用途そのものが変わってきていることです。最初は文書の要約、議事録の作成、メールのたたき台づくりなど、いわば内向きの事務作業から始まることが多かったのですが、いまはその先に進んでいます。あいさつ文案の作成、議事録要約、企画書案、メール文案に加えて、住民からの質問への回答案、庁内情報検索、画像生成まで活用例は広がっています。つまり、生成AIは単に職員の作業を楽にするだけでなく、行政サービスそのものの形を変える可能性を持ち始めているのです。

ここで重要なのは、導入の有無だけでは自治体の成熟度は測れないということです。本当に見るべきなのは、ガイドラインが整備されているか、職員研修が行われているか、入力してよい情報とそうでない情報のルールがあるか、住民対応の場面まで想定されているか、といった運用面です。生成AIは便利ですが、行政においては便利さだけで語ってはいけません。機密情報の扱い、誤回答への対応、責任の所在といった論点を抜きにして導入だけを誇っても、長くは続かないからです。

加えて、Copilotをめぐっては、ソフトだけでなくPC側の変化も見逃せません。MicrosoftはCopilot+ PCを、40 TOPS級のNPUを備えた新しいWindows PCのクラスとして位置づけています。NPUとは、AI処理に特化した専用プロセッサのことです。こうしたPCでは、画面上のテキストや画像をローカルで分析して次の操作につなげるような機能も用意されています。つまり、今後のCopilotは、契約するソフトだけではなく、「どんなPCで使うか」によって体験の深さが変わっていく存在でもあります。行政のAI導入を考えるうえでは、サービス選定だけでなく、将来的にはハードウェア環境まで含めて見ていく必要があると思います。

そう考えると、いま地方自治体で起きているのは、単なる生成AIの流行ではありません。大規模自治体ではCopilotや独自環境による先行導入が進み、中小自治体ではLGWAN対応や共同利用が現実的な選択肢として広がり、先進事例では住民向けサービスや教育現場まで視野が広がっています。そしてその背後では、ガイドライン、研修、運用ルールといった地味だけれど重要な土台づくりが進んでいます。

今後、名古屋市のような大都市が考えるべきなのは、導入するかしないかではなく、どの業務にどのAIをどう組み込み、どの範囲まで広げるかという設計の問題だと思います。Copilotだけを見ても実像はつかめませんし、逆にCopilotを見ずに自治体の生成AIを語ることもできません。必要なのは、Copilotとそれ以外の生成AIを分けて見ながら、自治体全体の流れとして把握することです。

生成AIは、もはや「試してみる先端技術」ではなくなりつつあります。地方自治体においても、それは少しずつ業務基盤の一部になり始めています。その変化をどう受け止め、どう使いこなすのか。これから問われるのは、導入実績の数ではなく、行政としての設計力なのだと思います。

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