2026/7/11
昨日、皇室典範などの改正案が衆院を通過しました。議運での審議時間はわずか3時間です。象徴天皇のあり方を左右する極めて重大な内容ですが、国民の理解が進み、審議が尽くされたとは言えず、今回の採決は暴挙としかいえません。
1)責任ある?積極財政
7月6日の参議院決算委員会で、西田昌司委員長は、高市総理が掲げる「責任ある積極財政」について質疑を行いました。(委員長としての質疑の課題については昨日の日記で述べたとおりです。)高市総理も、「こうした考え方は西田委員長と一致している」と答弁しています。
この「責任ある積極財政」とは、これまでのようにプライマリーバランス(PB)の黒字化を最優先するのではなく、必要な政府投資を積極的に行い、経済成長を実現することで税収を増やし、債務残高対GDP比の安定的な低下を図りながら、財政の持続可能性を確保しようという考え方です。
西田委員長は、政府が国債を発行して国内で支出すれば、その分だけ民間の預貯金が増え、所得も増えると説明しました。また、失われた30年は、財政健全化を重視し過ぎたために民間投資も低迷し、日本経済全体が停滞したことが原因であると主張しました。
この考え方には、積極的な財政運営によって経済を成長させようという明確な狙いがあります。
期待される効果としては、まず公共投資や教育、人材育成への投資によって需要が生まれ、企業活動が活発になり、雇用や賃金の改善が期待されます。さらに、企業収益や個人所得が増えれば税収も増加し、経済全体の好循環が期待されます。長年続いたデフレや投資不足から脱却し、日本経済の潜在成長率を引き上げようという発想です。
一方で、この考え方には慎重に考えなければならない課題もあります。
第一は、金利上昇です。
日本の長期金利は30年ぶりの高い水準となっています。国債は自国通貨建てであるため、デフォルトの可能性は極めて低いとしても、金利が上昇すれば、新たに発行する国債や借換債の利払い費は増加します。利払い費が増えれば、その分だけ社会保障や教育など他の政策に充てられる財源は少なくなります。
第二は、需要と供給のバランスです。
積極財政によって需要が急拡大しても、人手不足や資材不足などで供給力が追い付かなければ、経済成長ではなく物価上昇を招く可能性があります。そして、その結果として日本銀行の金融政策や市場の判断を通じ、金利上昇につながることも考えられます。
第三は、日本が開放経済であるという点です。
政府支出によって生まれた需要が輸入品や海外サービスの購入に向かえば、その効果の一部は海外へ流れ、国内経済への波及効果は小さくなります。
こうした懸念を現実のものとしないためには、「責任ある」の名にふさわしい財政規律が必要です。私は、そのためには少なくとも五つの指標を継続的に点検する必要があると考えています。
第一に、長期金利です。
市場が財政運営をどのように評価しているかを示す重要な指標です。
第二に、名目経済成長率です。
経済成長率が長期金利を上回っているかを確認しなければなりません。
第三に、需要と供給のバランスです。
供給力を超える需要拡大はインフレにつながります。
第四に、債務残高対GDP比や国債費・利払い費です。
財政の持続可能性を判断する上で欠かせない指標です。
第五に、経常収支です。
政府支出が国内経済を活性化しているのか、それとも海外への需要流出となっているのかを見極める必要があります。
「責任ある積極財政」とは、単に国債を発行して支出を拡大することではなく、その投資が将来の国力を高め、財政も持続可能であることを客観的な指標で確認しながら進める財政運営となって初めて「責任ある」と言えると私は考えています。
しかし、これまでの高市総理の答弁からは、「責任」をどのような客観的指標によって担保し、状況の変化に応じてどのように財政運営を修正していくのか、その具体的な道筋が十分に示されているとは私には思えません。
さらに重要なのは、金利が上昇した場合にどのような対応を取るのかという点です。積極財政は、始めることよりも、むしろ途中で見直したり縮小したりすることの方が難しい政策です。公共事業は一度着工すれば簡単には中止できませんし、教育、介護、子育て支援などの制度を拡充すれば、それは恒常的な支出となります。そのため、長期金利が上昇し、国債の利払い費が増えても、直ちに財政支出を縮小して出口に向かうことは容易ではありません。
財政政策は「積極財政か緊縮財政か」という二者択一で語るべきものではありません。経済成長と財政の持続可能性をどのように両立させるのか。そのために、どのような客観的指標を継続的に点検し、どのような状況になれば政策の規模や内容を見直すのか。その判断基準や政策修正の考え方をあらかじめ国民に示してこそ、「責任ある積極財政」と呼ぶにふさわしい財政運営になるのではないでしょうか。問題は、高市総理がそれを示せるかどうかだと感じています。
さあ今日も、ブレずに曲げずに、確実に前進します。
【26年7月11日 その6893『逢坂誠二の徒然日記』8590回】
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